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「設計職採用に日本語力の壁はない」インド、ネパール、パキスタン、中国等から外国人採用を実現。尾崎設計事務所の採用戦略とAI・翻訳ツールの活用

更新日:7 時間前


尾崎設計事務所。本社にて。外国籍社員との写真撮影

経験豊富な設計のプロが集う、株式会社尾崎設計事務所(以下、尾崎設計)。50年以上の歴史をもつ尾崎設計は1900年代中頃に住友化学や住友重機械工業の生産設備の設計を始め、1967年に法人化、愛媛県新居浜市に本社を構えています。1989年には当時希少だった、シミュレーションで設計図面を作成するCAD及びCAEを導入。解析業務から基本設計、詳細設計までを一貫して行っています。


経験豊富で全国から発注がある同社ですが、近年では若年人口の減少から地元での採用が難しくなっていると言います。6年前に外国人採用を開始し、よりフィット感のある人材の採用を目指してConnect Jobを利用いただきました。


社内公用語はもちろん日本語ですが、日本語能力にこだわらない新しい採用基準を取り入れるなど、枠にとらわれない採用活動を行っています。本インタビューでは、設計事務所特有の個人業務の多さを活かした外国人採用戦略について詳しくお聞きしました。


ゲスト:

株式会社尾崎設計事務所 代表取締役 

尾崎正幸氏(以下、尾崎)


インタビュー:

フォースバレー・コンシェルジュ株式会社 

中川 莉沙(以下、中川)


執筆者:

Connect Job編集部 中川 莉沙、矢野 雅斗



 

目次


 


1. 定着率の高い新卒採用に注目し、外国人採用をスタート


── 外国人採用を積極的に実施するようになった背景を教えていただけますか?


尾崎:弊社は地方企業・中小企業ということもあり、人口減少の影響を大きく受けています。近年は特に若年層の減少で、国内新卒採用の応募数は減少傾向にあります。


まず中途採用での人材確保を考えたのですが、中途採用で入社された方よりも新卒の方の方が業務に自然に慣れていくことが多かったんです。加えて、新卒の方の離職はほぼゼロで、定着率がかなり高かったこともあり、新卒採用の裾野を広げ、外国籍の方の採用に踏み切ることにしました。


中川:実際に外国籍採用をスタートされた際は壁もあったのではないでしょうか。


尾崎:弊社は個人の作業が多く、元々会話が少ない業務ということもあり、実はそんなに外国人社員受入に苦労していないんですよ。最近は翻訳機能が充実しているので言語面も問題ないですね。


自社で使用している設計アプリは全世界共通で使用されているものなので、国籍問わず、入社すれば即使用できるという点も大きいです。


中川:各社苦労される点を難なくクリアされていらっしゃるのですね。

ぜひその秘訣についても、この後詳しくお聞かせいただけたらと思います。



近年のAIや翻訳ツールの発達により、言語の壁はほとんどないと語る尾崎社長
近年のAIや翻訳ツール発達により、言語の障壁はほとんどないと語る尾崎社長

── どのように外国人採用を行っていますか?


尾崎:主に2種類の方法で高度外国人材を採用しています。

1つはConnect Jobを含む高度外国人材の紹介サービスの利用です。こちらでは毎年1~2名、ベトナム、中国、インドなど様々な国籍の方を受け入れています。


もう1つはフォースバレーが参画している愛媛県の「アジア高度IT人材受け入れ促進事業」への参加で、こちらでは毎年1~2名ネパールの方を採用しています。


今年は、国際化インターンシップ事業にも参加し、パキスタン出身の方のインターン受入を行い、その後入社いただくことが決定しました。


中川:様々な採用事業に参加されて、積極的に採用活動をされているのですね。


2. 国籍や日本語力よりも、意欲や志向を重視した採用活動

── 外国人採用において、これまでどんな方を採用されましたか?


尾崎:これまでの実績としては、出身地のトップ大学機械工学出身の新卒、第二新卒の方を採用しています。ベトナム、中国、インド、ネパールなど、様々な国の方が活躍しています。



仕事は充実していて楽しいと生き生きと話す外国籍社員、Januさん
2024年に入社されたJanuさん。仕事は充実していて楽しいと活き活きと話す。

── 採用時にはどのような点を注視していますか?日本人を採用する際と異なる点はありますか?


尾崎:採用するときに「外国人だから」と国籍で区別するようなことはしていないですね。


一貫して、入社いただいた方には、できるだけ長期間活躍して一人前になり、後輩指導なども行ってほしいと考えています。密にコミュニケーションをとるために、最初の1年は基本的に私のもとで仕事をしてもらうようにしています。


中川:先ほど私も外国人社員の皆さんとお話させていただいたのですが、口々に「尾崎社長がとても丁寧に教えてくださる」と話していました。

そうした環境下で皆さん安心して業務に当たられているんですね。


尾崎:1点、海外採用の際に気を付けていることを挙げるとすると「将来的に母国に帰りたいか」という点ですね。


弊社では日本人もリモートワークしていますので、独り立ちしたら母国に帰ってのリモートワークも問題ないと考えています。

ただ、日本の方が医療が充実していたりもするので、ご家族での移住含めて日本で長期的に働いてもらえたら嬉しいですね。


中川:日本でも海外でも関係なく働けるそのフラットな考え方は、外国籍の社員にとって、非常に心強いと思います。

設計職は専門的な知識と技術を要すると思いますが、一人前になるにはどのくらいの期間が必要なのでしょうか?


尾崎:約10年ほどでしょうか。独り立ちするまでは現場で学んでほしいと考えています。自国の家族、結婚や介護などのライフプランを気にする社員も多いので、そこは気にかけながら採用を行っています。



── 外国人採用において1つのポイントとなる「日本語能力」について、どの程度重視していますか?


尾崎:面接の時点では日本語能力よりも、成長の見込みや意欲があるかどうかを重視しています。


弊社の設計業務は個人で行うものがほとんどなので、最近だと翻訳ツール等で社内コミュニケーションは事足りる場合が多いです。そのため、プラント設計に興味があるかや、コツコツと業務に取り組めるかといった性格を重視しています。


機械設計職は仕事の性質上、責任が伴う仕事で、地道に取り組むことが求められます。そのため性格的な不一致がないかを確認するとともに、意欲的に仕事に取り組めるかどうかを確認するようにしています。


3. 採用エージェント フォースバレー・コンシェルジュ(Connect Job)の活用方法


── Connect Jobを長期間利用いただいていますが、継続利用いただいている背景や、ご感想をお聞かせいただけますか?


尾崎:内定後の日本語教育がすごく有効だったと感じています。特にネパールでの現地教育機関は、私も採用活動でネパールを訪れた際に見学しましたが、来日前に日本人と接触できる仕組みとして非常に効果的だと思います。


また、採用対象国が幅広く、各国の情勢に合わせた柔軟な施策を提供できるので継続して御社にお願いしています。


例えば、今後ネパールやベトナムの採用競争が激しくなった時に、南米やアフリカなど新しい地域からの採用も視野に入れています。


中川:弊社では、昨年2024年に日本初となるグローバルサウス IT / AIエンジニアインターンシップ事業を経済産業省から受託・運営しました。

南米やアフリカ出身の学生が日本でインターンシップに参加するなど、新たな地域への注目が高まっていますが、尾崎社長はすでにそこに注目されていらっしゃるとは、まさにパイオニアですね。


尾崎:今後、世界各地の大学とのパイプをもっと増やしていただければ嬉しいなと思っています。


中川:ぜひ、そうしたエリアからの採用についても、今後ぜひご協力できればと思っております。



4. 業務ではAI翻訳ツールを積極的に活用。外国籍社員同士で教えあえる環境づくり


── 入社後の研修はどのようにしていますか?業務に慣れていくためにどのように工夫されているのでしょうか?


尾崎:日本人社員と同じように、機械の設計及び開発、図面の作成や、構造物の強度計算や基礎設計、運搬、容器構造物、配管系などの銅精製プラント工場全般設計などに取り組みます。多くの場合で3次元CAD及び解析が絡みます。


大体最初の2週間で日常的な業務に慣れてもらうために軽めの業務を依頼し、その後は一般的な業務にあたってもらっています。1~2年目は基本的に上司の指示に基づきますが、早くからレベルの高い業務を依頼しています。

また、意図的にメンバー同士の担当業務を入れ替え、お互いに業務の進め方を教えあっています。


大体3年目くらいから後輩指導を任命し、1人前になるまでに5~10年業務にあたってもらうスケジュールになっています。



外国籍社員同士で指導を行う様子
外国籍社員同士で指導を行う様子

── 外国籍社員の定着のために工夫されていることはありますか?AI・翻訳ツールの活用についても詳しくお聞きしたいです。


尾崎:最初は2人以上採用して外国籍社員同士で情報共有ができるようにしていました。外国籍のメンバーが増えてからは1人で採用することも増え、現在は同じ国出身の先輩社員をフォロー役につけ、安心感を得られるようにしています。


中川:自分と同じ境遇の先輩社員がいることは、働きやすさにつながりますね。


尾崎:仲間同士でコミュニケーションできるのは、大きいですよね。実際に、直近パキスタン人のインターン生を受け入れた際には外国籍社員がフォローにあたってくれましたので、私の出番がほとんどなかったくらいです。


中川:翻訳ツール等の活用、業務指示の工夫についてもぜひ教えていただけますか?


尾崎:業務上では業務内容を理解できるような工夫を心がけています。

例えば、仕事上の指示はすべて文章で送って可視化し、口頭で補足することで、本人が指示内容を理解できるまで確認できるようにしています。指示を行ってからも取り組む様子を注意深く見て業務を理解できているか気を配るようにしています。


最近は、口頭で話した内容を文字起こし・翻訳してくれるアプリもあるので、よく活用しています。


中川:翻訳ツールを実務で活用して言語の壁を取り払っていらっしゃるのですね。AI活用の最先端を行ってらっしゃいますね。


尾崎:また、業務外の日常生活でのストレスを軽減できるよう意識しています。

日本語教室や日本に住む外国籍の方が集まるコミュニティーを紹介したり、為替状況を考慮してできるだけ良いタイミングで仕送りができるようなアドバイスをしたり、日本で心地よく暮らせるようなサポートを行っています。


最近は外国人社員同士で旅行に行ったりしているようなので、ほとんど必要なくなりましたが、初期は入国直後の週末などに生活面をサポートするようにしていました。



Swamiさん、新居浜太鼓祭りにて
伝統的な新居浜太鼓祭りに参加する外国籍社員、Swamiさん。


5. 外国人採用の今後の展望


── 外国人採用を始めて約6年ということですが、感想や今後の方針などを教えてください。


尾崎:採用する前は言語の問題などで、業務の依頼やすり合わせが難しいのではないかなと思っていました。しかし実際働き始めてみると杞憂だったなと思います。

業務上必要な数学や工学の知識やスキルは世界共通のものであり、大学で工学や数学を学び、基礎が身についている方々なので指示をすぐに理解してくれました。


日々、真面目に仕事に取り組んでくれるので採用してよかったなと思っており、来年以降も続けていきたいです。南米での業務の依頼をいただくこともあり、外国籍だからこそ持っている、言語力等のスキルを持つ人材の獲得を目指すのもいいなと思っています。


また、弊社ではいずれ社員が場所に縛られずに働けるようにしたいと考えており、そのための環境づくりのきっかけになったのも採用してよかったと思う理由の一つです。


ただ、現状やはり日本人のお客様との測定や打ち合わせ等、日本語力が求められる場面も多いです。会社全体のバランスを見ながら、今後も外国人採用を継続していきたいと思います。


── そんな御社にとっての「グローバル採用」とは、なんでしょうか。


尾崎:日本の生産能力を上げるために、欠かせないものの一つだと思います。

また、少子化が激しい日本で、企業として成長するうえでは不可欠になっていくものかなと思っています。


── 今後就職活動を行う海外の学生に伝えたいことは?


尾崎:ぜひ日本に来て、働いてもらいたいと思っています。この一言に尽きますね。


中川:御社でなら、ストレス少なく日本での生活を送ることができ、技術的にも成長できるだろうというのが今日のお話から伝わってきました。これは学生の皆さんにとってとても魅力的なものだと思います。


また、地方企業、中小企業でありながら、積極的に外国人採用に取り組まれていて、言語の不安も取り払う尾崎社長のマインドには感激いたしました。全国の人事担当者の方、経営者の方も、きっと勇気づけられたのではないかと思います。


本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


笑顔で語る尾崎社長
今後も外国人採用は不可欠だと語る、尾崎社長

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