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不法就労助長罪とは?不法滞在や不法就労の例や罰則、対策について解説

  • 執筆者の写真: Hayato Kuroda
    Hayato Kuroda
  • 17 時間前
  • 読了時間: 14分

外国人労働者の採用において、企業が知らないうちに法律違反を犯してしまうリスクが存在します。特に「不法就労助長罪」は、外国人を雇用する企業が注意すべき重要な法的概念です。不法滞在者や就労資格のない外国人を雇用した場合、企業側にも厳しい罰則が科される可能性があります。


本記事では、不法就労助長罪の基本的な内容や罰則、不法滞在・不法就労の定義、そして企業が取るべき対策について詳しく解説します。


目次


  1. 不法滞在とは

不法滞在で捕まった外国人

不法滞在とは、外国人が有効な在留資格や在留期間を超えて日本に滞在している状態を指します。主な例としては、以下のようなケースが挙げられます。


  1. 在留期間が切れた後も日本に滞在し続ける(いわゆるオーバーステイ)

  2. 短期滞在などの許可を得て入国し、その期間を超えて滞在する

  3. 虚偽の申告によって在留資格を取得し、その後入管により資格が取り消されたにもかかわらず、30日以内に出国しない場合


なお、虚偽の申告があっても、在留資格が正式に取り消されるまでは形式上有効とされます。資格取消し後30日以内に出国しなければ不法滞在とみなされ、退去強制の対象となります。


日本の入管法ではこのような不法滞在を厳しく取り締まっており、不法滞在者を雇用した企業にも「不法就労助長罪」として刑事責任が問われることがあります。

以下で詳しく解説します。


オーバーステイ(不法残留)

オーバーステイは、合法的に入国した外国人が、与えられた在留期限を超えて日本に滞在し続けることを指します。例えば、観光ビザで入国した外国人が期限を過ぎても帰国せず日本に残るケースや、留学生が卒業後も在留期限を超えて滞在するケースなどが該当するものです。オーバーステイの状態では不法残留罪が成立し、刑事上および行政上の責任が発生することになります。


また、オーバーステイの状態では国民健康保険に加入できないため、病気やけがの際に医療費が高額になるなど、本人にも深刻な問題が生じかねません。


不法滞在時の罰則

不法滞在が発覚すると、外国人は出入国管理及び難民認定法に基づき、退去強制(いわゆる強制送還)の対象となります。強制送還された場合、単に母国へ戻されるだけでなく、一定期間は日本への再入国も認められません。


この再入国禁止期間は違反内容によって異なりますが、日本の秩序維持および不法滞在の防止を目的とした厳格な措置です。


不法滞在した外国人はどうなる?

不法滞在した外国人は、入国管理局による摘発を受けると、通常は収容施設に収容された後、退去強制手続きが進められます。その際、過去の退去強制歴などによって以下のような再入国禁止期間が設けられます。


  • 過去に退去強制された経験がある(リピーター):10年間

  • 初めて退去強制される:5年間

  • 出国命令により自主的に出国:1年間


特に、麻薬や覚醒剤などの法令違反で刑に処せられた者については、再入国禁止期間に定めはなく、日本に再入国することができません。



  1. 不法就労とは

はてなマークのある木製の玩具

とは、外国人が日本の法令に違反して就労活動を行うことを意味します。在留資格を持っていても、許可されていない業務に従事すれば不法就労と見なされる点に注意が必要です。


 入管法では、在留資格ごとに就労の可否や範囲が細かく規定されており、これに違反した場合は、外国人本人のみならず、雇用した企業側も処罰の対象になります。


不法就労は、主に以下の3つのケースに分類されます。


  1. 不法滞在者や被退去強制者が働くケース

    • 密入国した人や在留期限の切れた人が働く

    • 退去強制されることが既に決まっている人が働く

  2. 就労できる在留資格を有していない外国人で出入国在留管理庁から働く許可を受けていないのに働くケース

    • 観光などの短期滞在目的で入国した人が許可を受けずに働く

    • 留学生や難民認定申請中の人が許可を受けずに働く

  3. 出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くケース

    • 外国料理のコックや語学学校の先生として働くことを認められた人が工場で作業員として働く

    • 留学生が許可された時間数を超えて働く


また基本的に、以下に該当する外国人は就労できません。

  • 「短期滞在」や「研修」などの在留資格で在留している

  • 在留期間を超えて滞在している

  • 上陸の許可を受けることなく滞在している


このような状況下で就労した場合には、不法就労となり退去強制などの処分を受けることになります。



不法就労した時の罰則

不法就労が発覚した外国人に対しては、3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。さらに退去強制(強制送還)の対象となり、母国などへ強制的に送還されることに加え、一定期間日本への再入国が禁止されます。特に悪質なケースでは、実刑判決を受けて服役した後に退去強制となるのです。


また、不法就労した外国人を雇用した企業側にも「不法就労助長罪」として罰則が科されることになるので注意が必要です。企業が外国人の採用を検討する際には、在留資格や就労制限について十分に確認することが法的リスク回避のために不可欠です。


  1. 不法就労助長罪とは

裁判官と木槌

不法就労助長罪とは、外国人を不法に就労させたり、不法就労をあっせんしたりした場合に適用される罪です。外国人を雇用する企業や個人が、不法滞在者やその他就労資格のない外国人を雇用した場合、この罪に問われる可能性があります。


不法就労助長罪の罰則

不法就労助長罪は、近年厳罰化が進んでいます。具体的には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。2024年12月16日の法改正では、処罰内容がさらに厳格化され、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に引き上げられました。



重要なのは、外国人を雇用しようとする際に「当該外国人が不法就労者であることを知らなかった」という抗弁は、必ずしも処罰を免れる理由にならないという点です。在留カードを確認していない等の過失がある場合には、たとえ「知らなかった」としても、企業は罰則を免れません。さらに、外国人事業主が不法就労を斡旋した場合は、日本人と同様に処罰されるだけでなく、退去強制の対象となることもあります。


 このように、不法就労助長罪は企業にとって重大なリスクであり、外国人を雇用する際には、在留資格や就労の可否を慎重に確認することが必要です。


  1. 不法就労助長罪に該当する3つのケース

裁判官と被告人

企業が不法就労助長罪に問われるパターンは、大きく分けて以下の3つのケースがあります。外国人採用に関わる担当者は、これらのケースを十分に理解し、法令違反を未然に防ぐことが重要です。


不法滞在の外国人労働者を雇用した場合

不法滞在者や被退去強制者の外国人は、そもそも就労が認められていません。これらの外国人を雇用することは、即座に不法就労助長罪に該当します。


不法滞在者とは、密入国した人や在留期限が切れているにもかかわらず日本に滞在し続けている外国人のことです。また正規に取得した在留資格を持つ外国人であっても、在留期間更新の許可申請を怠っている場合は不法滞在の状態となるので注意してください。オーバーステイとならないよう、雇用する企業側にはしっかりとした管理体制が求められます。


さらに既に退去強制が決まっている「被退去強制者」を雇用するケースも不法就労助長罪に該当するため、注意が必要です。


就労が認められていない(不法就労)外国人を雇用した場合

就労が許可されていない在留資格を持つ外国人を働かせた場合も、不法就労助長罪に問われます。

就労が原則的に認められない在留資格は、「短期滞在」「留学」「文化活動」「家族滞在」などが挙げられます。ただし、「留学」や「家族滞在」などの在留資格であっても、資格外活動の許可を受ければ一定の範囲内で就労可能です。この「資格外活動許可」がない状態で就労させると、不法就労助長罪に該当します。


例えば、観光などの短期滞在目的で入国した外国人や、資格外活動許可を受けていない留学生や難民認定申請中の人を雇用した場合、不法就労助長罪となってしまうのです。


在留資格の範囲を超えて働かせた場合

就労が認められている19種類の在留資格でもそれぞれに活動範囲が厳格に定められており、許可された範囲を超えた業務に従事させると、不法就労助長罪に問われるので注意が必要です。


具体的な例としては、外国料理のコックとして働くことを認められた人を工場で単純労働者として働かせるケースや、留学生が許可された週28時間という制限を超えて働くケースなどが該当します。また、「特定技能」の場合は業種が限定されているため、認められた業種以外で働かせると不法就労扱いになってしまうのです。


なお、「永住者」や「定住者」などの在留資格を持つ外国人については、就労に制限がないため、どのような職種でも就労可能です。しかし、それ以外の在留資格については、活動範囲を十分に確認することが重要です。


  1. 不法就労助長罪の事例

不法就労助長罪がどのような状況で適用されるか、実際の事例を見てみましょう。以下に示す事例は、企業担当者が陥りやすい落とし穴を理解する上で参考になります。


風俗店経営者の事例

ある風俗店経営者は、自身が経営する店において売春を行う場所を提供し、外国人を不法就労させました。この経営者は入管法違反(不法就労助長)および売春防止法違反により、懲役2年、執行猶予4年、罰金50万円の判決を受けました。


この事例では、在留資格「経営・管理」を持つ外国人を本来認められていない風俗業に従事させた点が不法就労助長罪に該当しています。



清掃業務請負会社の事例

令和2年10月、長野県の清掃等業務請負会社経営者の日本人女性らは、令和2年6月から同年9月にかけて「技能実習」の在留資格で入国したベトナム人男性らを労働者供給契約に基づき、野菜農家で農作業に従事させていました。


技能実習生を本来の実習先とは異なる場所で働かせたため、職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)で日本人経営者らが、入管法違反(資格外活動)でベトナム人実習生が逮捕されました。


人材派遣会社の事例

令和2年11月、千葉県の人材派遣会社社員の日本人男性らは、令和元年7月から令和2年10月にかけて「技能実習」などの在留資格で入国したベトナム人男女を水産加工会社に派遣し、働かせていました。この事件では、日本人社員5人が入管法違反(不法就労助長)で逮捕されました。


また、ベトナム人が作業員として働くことを知りながら日本人男性らにあっせんしたベトナム人男性1人(不法残留)も入管法違反(不法残留、不法就労あっせん)で逮捕されています。さらに、作業員として働いていたベトナム人男女5人(不法残留)も入管法違反(旅券不携帯、不法残留)で逮捕されました。



これらの事例から分かるように、不法就労助長罪はさまざまな状況で適用される可能性があります。外国人を雇用する企業は、これらの事例を教訓として、適切な確認体制を構築することが重要です。


  1. 企業が押さえておきたい不法就労助長罪を防ぐポイント

外国人を雇用する企業が不法就労助長罪を防ぐためには、適切な確認手順を踏むことが重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。


身分の確認

外国人を雇用する際は、まず本人の身分確認を確実に行うことが基本です。以下の点に注意して確認を行いましょう:

  • 本人かどうか(写真と本人の一致)

  • 在留期限内かオーバーステイしていないか

  • 就労の可否認

  • 就労不可の場合、資格外活動許可を得ているか


就労可能な在留資格は大きく分けて以下の通りです:

  • 就労に制限がない在留資格:永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

  • 就労可能(決められた活動範囲のみ):外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習

  • 原則就労不可:文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在 ※留学、家族滞在は資格外活動許可があれば就労可能。留学生は週28時間まで


在留カードの確認



在留カードの見本

在留カードは偽造される可能性もあるため、本物かどうかの確認が重要です。必ず在留カードの現物で確認を行いましょう。


在留カード表面の「就労制限の有無」欄を確認

在留カード表面の「就労制限の有無」欄には、就労可否に関する重要な情報が記載されています。主に以下のパターンがあります。

  1. 「就労不可」の記載がある場合

    • 原則雇用はできませんが、「資格外活動許可」欄も確認する必要がある

  2. 一部就労制限がある場合

    • 次のいずれかの記載がある:

      • 「在留資格に基づく就労活動のみ可」

      • 「指定書により指定された就労活動のみ可」(在留資格「特定活動」)

    • 特定技能の場合は、指定書を確認する必要がある

  3. 「就労制限なし」の記載がある場合

    • 就労内容に制限はない


難民認定申請中の人については、有効な在留カードを所持していない場合や在留カードに「就労不可」と表示されている場合は雇用できません。


在留カード裏面の「資格外活動許可」欄を確認

在留カード裏面

「就労制限の有無」欄が「就労不可」または「在留資格に基づく就労活動のみ可」であっても、裏面の「資格外活動許可欄」に以下のいずれかの記載がある人は、一定の条件下で就労することができます:

  1. 「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」

    • 複数のアルバイト先がある場合には、その合計が週28時間以内でなければなりません

  2. 「許可(「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「技能」に該当する活動・週28時間以内)」

    • 地方公共団体などとの雇用契約に基づく活動である必要があります

  3. 「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」

    • 資格外活動許可書を確認する必要があります


在留カード等の番号が失効していないか確認

出入国在留管理庁のホームページにある「在留カード等番号失効情報照会」ページで、在留カード番号が失効していないかを確認することができます。


ただしこの確認だけでは不十分です。実在する在留カードなどの番号を悪用した偽造在留カードも存在するため、以下の4つのポイントや在留カードなど読取アプリケーションも併せて活用しましょう。


偽造在留カードの判別方法:

  1. 「MOJ」の周囲の絵柄の色の変化を確認(グリーン→ピンク)

  2. 左端の縦型模様の色の変化を確認(グリーン→ピンク)

  3. 顔写真下のホログラムの変化を確認(角度によって白黒反転)

  4. カード裏面の透かし文字を確認(「MOJMOJ...」)

在留カード裏面の透かし文字
在留カード裏面にある透かし文字の見分け方

仮放免許可は在留資格ではないことに注意


仮放免許可書のサンプル
仮放免許可書の例

仮放免許可を受けた外国人は、入管法違反の疑いで退去強制手続中であるか、すでに退去命令を受けた人です。本来であれば入管施設に収容される立場にありますが、健康上の理由や手続の長期化などにより、一時的に収容を解かれています。


仮放免は在留資格ではなく、一時的な「収容停止措置」にすぎません。そのため、仮放免中の外国人には在留カードが発行されず、原則として就労は認められません。


仮放免許可書の裏面に「職業又は報酬を受ける活動に従事できない」という条件が付されている場合は、就労させることはできません。仮放免者を雇用すると、企業側が不法就労助長罪に問われる可能性があるため、判断に迷う場合は、必ず最寄りの出入国在留管理局へ事前に確認するようにしましょう。



  1. まとめ

不法就労助長罪は、企業が知らないうちに犯してしまう可能性のある重大な法令違反です。外国人を雇用する際は、在留カードの確認を徹底し、就労制限の有無や資格外活動許可の確認を必ず行いましょう。また、在留カードの真偽判断も重要です。


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Connect Job編集部


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運営会社:フォースバレー・コンシェルジュ株式会社(https://www.4th-valley.com



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