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外国人労働者にも最低賃金は適用される!技能実習生の賃金問題や対策を解説

  • 執筆者の写真: Hayato Kuroda
    Hayato Kuroda
  • 6月19日
  • 読了時間: 15分

更新日:7月16日

外国人労働者にも最低賃金は適用される!外国人の給与や違法リスク回避で注意すべき3つのポイント、技能実習生の低賃金問題の事例を解説

近年、人手不足の解決策として外国人労働者の採用が急速に拡大しています。しかし、外国人労働者を雇用する際には、日本人と同様に最低賃金法の適用を受けるため、適切な賃金設定が不可欠です。

特に技能実習生や特定技能人材の受け入れにおいて、最低賃金を下回る給与設定は法律違反となり、企業にとって大きなリスクとなります。


本記事では、外国人労働者への最低賃金適用の基準、賃金格差が生まれる理由、実際の問題事例を通じて、適切な労務管理とコンプライアンス対策について詳しく解説いたします。


目次


  1. 日本の最低賃金制度の概要

日本の最低賃金制度の概要

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低額を定め、雇用主がその金額以上の賃金を労働者に支払わなければならない制度のことです。厚生労働省では、この制度について「使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度」と定義しています。


労働基準法において、給与額は最低賃金を満たすことが義務付けられており、これに違反した場合は法律違反となります。最低賃金は時給換算で判断されるため、月給制の場合でも、月収を労働時間で割った時給が最低賃金を下回ってはなりません。

2025年6月時点の主要都道府県における最低賃金は以下の通りです。

都道府県

最低賃金(時給)

東京都

1,163円

神奈川県

1,162円

大阪府

1,114円

愛知県

1,077円

埼玉県

1,078円

千葉県

1,076円

北海道

1,010円

宮城県

973円

福岡県

992円



  1. 外国人労働者にも、日本人と同様に最低賃金が適用される


最低賃金法において、国籍による区別は一切ありません。外国人労働者に対しても、日本人と同様に最低賃金法が適用されます。たとえ技能実習生であっても、最低賃金を下回る賃金設定は法律違反となるため注意が必要です。


企業の中には「外国人労働者は教育の手間がかかるため、その分賃金を安くしても問題ないのではないか」と考える場合があるかもしれません。しかし、教育コストや日本語でのコミュニケーション能力の差を理由に、最低賃金を下回る賃金設定をすることは認められていません。


外国人パート・アルバイト労働者への時給と最低賃金


パートやアルバイトとして働く外国人労働者についても、同様に最低賃金が適用されます。


2024年の賃金構造基本統計調査によると、短時間労働者の1時間当たり賃金は全体で1,476円、男性1,699円、女性1,387円となっています。年齢階級別で見ると、1時間当たり賃金が最も高い年齢階級は、男性では50~54歳で2,434円、女性では30~34歳で1,545円でした。



技能実習生への最低賃金適用

技能実習生は日本への技術移転を目的として来日していますが、「実習だから賃金は関係ない」という考えは完全に誤りです。仮に受け入れ先企業と技能実習生が最低賃金額を下回る賃金で労働契約を締結した場合でも、その賃金額は無効となり、最低賃金額で締結したものとみなされます。


最低賃金以上の金額を支払わない場合、入管法に基づく不正行為の対象となる可能性があり、監理団体や受け入れ先企業は技能実習生の受け入れを一定期間停止される処分を受けることになります。実際に毎年処分事例が発生しているため、十分な注意が必要です。


  1. 外国人労働者の賃金に関する状況

外国人労働者の賃金に関する状況

続いて外国人全体における賃金相場について見ていきましょう。


外国人労働者全体の平均賃金

2024年の賃金構造基本統計調査によると、外国人労働者全体の平均賃金は24万2,700円となっており、対前年増減率は4.3%の増加を示しています。この数字は、外国人労働者の賃金水準が徐々に改善されていることを表しており、労働力不足を背景とした待遇改善の動きが反映されていると考えられます。


ただし、この平均賃金は在留資格や業種、地域によって大きな差があることも事実です。企業が外国人労働者を雇用する際は、この全体平均を参考にしつつも、該当する在留資格や職種における適正な賃金水準を把握することが重要となります。


在留資格ごとの賃金水準

2024年の賃金構造基本統計調査では、外国人労働者の賃金統計が集計されました。外国人労働者全体の平均賃金は242.7千円となっており、対前年増減率は4.3%の増加となっています。

在留資格別の賃金水準は以下の通りです。

在留資格区分

賃金(千円)

対前年増減率(%)

外国人労働者計

242.7

4.3

専門的・技術的分野(特定技能を除く)

292.0

-1.6

特定技能

211.2

6.7

身分に基づくもの

300.3

13.4

技能実習

182.7

0.6

その他(特定活動および留学以外の資格外活動)

226.5

-2.1


なお外国人を含む労働者全体の賃金平均は、正社員の場合348.6千円、正社員以外の雇用形態の場合233.1千円となっています。


短時間労働者の時間給

短時間労働者として働く外国人の賃金状況について、2024年の厚生労働省の統計データを詳しく見てみましょう。外国人常用労働者計の短時間労働者における「きまって支給する現金給与額」は11万4,900円、「所定内給与額」は11万500円となっています。また1年間の賞与等特別給与額は2万3,700円でした。


在留資格別に短時間労働者の給与水準を確認すると、以下のような状況となっています。

専門的・技術的分野では、きまって支給する現金給与額が20万1,600円(平均時給1,800円)と最も高い水準を示しています。このうち技術・人文知識・国際業務の在留資格では19万3,300円(平均時給1,600円)となっており、専門性の高い業務に従事していることが給与水準に反映されています。

留学生のアルバイトでは9万3,000円(平均時給1,300円)となっており、週28時間以内という就労時間制限があることも影響していると考えられます。


身分に基づく在留資格の場合、永住者が11万5,200円(平均時給1,400円)、定住者が11万6,100円(平均時給1,300円)となっており、比較的安定した給与水準となっています。

一方、その他の在留資格では8万9,200円(平均時給1,200円)と相対的に低い水準にあります。


  1. 同一労働同一賃金制度は外国人も適用対象

同一労働同一賃金制度は外国人も適用対象

外国人労働者の雇用においては、最低賃金の遵守に加えて、同一労働同一賃金制度についても理解しておく必要があります。この制度は雇用形態や国籍に関係なく適用されるため、外国人労働者に対しても適切な運用が求められます。


厚生労働省のガイドライン

同一労働同一賃金は、正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保するための制度です。国籍に関係なく適用されるため、外国人労働者に対しても同一労働同一賃金が適用されます。


仕事内容が違えば賃金も違って当然であり、待遇に差があっても合理的な理由があれば問題ありません。しかし、理由が差別的であることは許されないため、「合理的な理由と言えるのかどうか」がポイントとなります。

厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では、労働実態に違いがあり得ることを認めた上で、以下のように定めています。


「基本給が、労働者の能力又は経験に応じて支払うもの、業績又は成果に応じて支払うもの、勤続年数に応じて支払うものなど、その趣旨・性格が様々である現実を認めた上で、それぞれの趣旨・性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない」


これは、単に「期待される役割が異なる」というだけでは合理性が不十分であり、企業は賃金の決定基準やルールを明確な根拠と共に設定し、それぞれの職務内容の違いを明確にする必要があることを意味しています。この原則は外国人労働者の場合も同様に適用されます。


  1. 外国人労働者の間で賃金格差が生まれる理由

これまで見たデータからも明らかなように、外国人労働者の間には大きな賃金格差が存在しています。同じ外国人労働者でありながら、なぜこのような格差が生まれるのでしょうか。


在留資格による制約の違い

外国人労働者の賃金格差の最大の要因は、在留資格による制約の違いにあります。前述の通り、技能実習の平均賃金は18万2,700円である一方、専門的・技術的分野(特定技能を除く)では29万2,000円と、10万円以上の差が生じています。


この格差は、在留資格ごとに異なる就労条件や労働市場での立場の違いに起因しています。専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人は、大学卒業や専門的な実務経験といった取得要件があるため、高度な業務に従事することが多く、それに応じた高い賃金が設定されています。


一方、技能実習制度では、受け入れ企業の変更が原則として認められていないため、労働者と雇用主の間で対等な労使関係を構築することが困難です。この制度的な制約により、技能実習生は労働条件の改善を求めにくい状況に置かれ、結果として低賃金となる傾向があります。


短時間労働者における格差

短時間労働者においても、在留資格による格差は顕著に表れています。前述の統計によると、専門的・技術的分野の短時間労働者では平均時給1,800円となっている一方、留学生のアルバイトでは平均時給1,300円、その他の在留資格では平均時給1,200円と、大きな開きがあることが分かります。


特に留学生については、週28時間以内という就労時間制限があるため、高時給の職種に就くことが難しく、コンビニエンスストアや飲食店などのサービス業でのアルバイトが中心となることが多いです。


職種・業種による影響

身分に基づく在留資格を持つ外国人労働者についても、同年代の日本人と比較すると賃金格差が存在します。その理由として、これらの外国人労働者の多くが製造業(26%)やサービス業(15.4%)に集中して就労していることが挙げられます。


これらの業種では、外国人労働者は単純労働を任されることが多く、技術習得や昇進の機会に恵まれにくいため、結果として低賃金につながっていると推定されます。


雇用制度の違いによる影響

日本では新卒一括採用による「メンバーシップ型雇用」が主流である一方、海外では職務を明確に定義した「ジョブ型雇用」が一般的です。外国人労働者の多くは在留資格により従事できる業務が限定されているため、ジョブ型雇用の考え方に慣れています。


しかし、日本企業の多くは勤続年数や経験職種に基づく昇給システムを採用しているため、明確な職務内容や賃金テーブルを求める外国人労働者にとって、賃金の上昇が見込みにくい構造となっています。これが「給料が上がらない」「給料が安い」という不満につながっているのです。


このような複合的な要因により、外国人労働者の間で大きな賃金格差が生まれているのが現状です。企業が外国人労働者を雇用する際は、これらの背景を理解し、適切な待遇を提供することが重要となります。


  1. 外国人労働者の低賃金問題に関する事例

外国人労働者の低賃金問題に関する事例

外国人労働者、特に技能実習生の低賃金問題は深刻な課題として長年指摘されています。実際に発生した事例を通じて、企業が注意すべき問題点を確認してみましょう。


技能実習生の低賃金事例

2012年に岐阜県内の縫製工場で発生した事例は、外国人労働者の低賃金問題の深刻さを如実に示しています。中国人女性技能実習生として働いていたこの女性は、1日約15時間という長時間労働を強いられ、月の残業時間は200時間に上りました。年間の休日は正月の数日のみという過酷な労働環境でした。


当時の岐阜県の最低賃金は時給738円でしたが、この企業では基本給を月額5万円とし、残業代については時給300~400円という最低賃金を大幅に下回る金額で支払っていました。この女性が最低賃金について知り、適正な賃金の支払いを求めたところ、企業側は解雇を通告し、帰国を強制したのです。


企業が外国人労働者を雇用する際は、国籍に関係なく労働基準法を厳格に遵守することが不可欠です。最低賃金の確認はもちろん、労働時間の適切な管理、残業代の正確な計算と支払い、有給休暇の適切な付与など、日本人労働者と同様の労働条件を提供する必要があります。


問題の背景と企業への影響

このような低賃金問題が発生する背景には、技能実習制度における構造的な課題があります。技能実習生は原則として受け入れ企業の変更ができないため、対等な労使関係を構築することが困難になりがちです。また、一部の監理団体や海外の送出機関が最低賃金を基準とした賃金設定を推奨していることも、低賃金問題の一因となっています。


企業にとって、このような法律違反は重大なリスクとなります。最低賃金違反や労働基準法違反が発覚した場合、技能実習生の受け入れ停止処分を受ける可能性があり、企業の社会的信用失墜や事業継続への影響は計り知れません。


適正な賃金管理に向けて

企業が外国人労働者を雇用する際は、国籍に関係なく労働基準法を厳格に遵守することが不可欠です。最低賃金の確認はもちろん、労働時間の適切な管理、残業代の正確な計算と支払い、有給休暇の適切な付与など、日本人労働者と同様の労働条件を提供する必要があります。


特に技能実習生や特定技能人材の受け入れを検討している企業は、適正な労務管理体制の構築と、定期的な法令遵守状況の確認を行うことで、このような問題を未然に防ぐことができるのです。


  1. 外国人労働者の賃金に関する3つの対策

外国人労働者の賃金に関する3つの対策

最低賃金の遵守は法的義務ですが、それだけでは外国人労働者との賃金トラブルを完全に防ぐことはできません。外国人労働者が抱きやすい不満や疑問を理解し、適切な対策を講じることで、労使双方にとって良好な関係を築くことが可能です。


税金の天引きに対する十分な説明

外国人労働者にとって、日本の給与システムは複雑で理解しにくいものです。所得税の源泉徴収、住民税の特別徴収、社会保険料の控除など、さまざまな項目が給与から差し引かれます。母国では給与の天引きシステムが存在しない国も多く、手取り額が想定より大幅に少ないことに驚く外国人労働者は少なくありません。


このような状況を避けるため、雇用契約時には給与明細の見方を含めて詳細な説明を行うことが重要です。特に以下の点について、具体的な金額を示しながら説明することをお勧めします。


  • 所得税(源泉徴収)の仕組みと税率

  • 住民税の計算方法と徴収時期

  • 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)の内容と負担割合

  • 各控除項目の目的と将来的なメリット


多言語対応の給与明細書や説明資料を用意することで、理解度を高めることができます。また、入社後も定期的に給与システムについて質問を受け付ける体制を整えることで、不安や疑問を早期に解消できるでしょう。


最低賃金額の確認と遵守

各都道府県の最低賃金は毎年見直しが行われるため、定期的な確認と適用が必要不可欠です。特に複数の地域で事業を展開している企業では、地域ごとの最低賃金の違いを正確に把握し、適切に適用する必要があります。


外国人労働者の雇用においては、以下の点に特に注意が必要です。

時給制の場合は最低賃金との比較が容易ですが、月給制の場合は労働時間で割り戻して時給換算での確認が必要となります。また、技能実習生や特定技能人材については、受け入れ機関や監理団体による定期的な監査もあるため、より厳格な管理が求められます。


賃金台帳の適切な記録・保管も重要なポイントです。労働時間の記録、残業代の計算根拠、各種手当の支給基準など、透明性のある賃金管理を行うことで、外国人労働者からの信頼を獲得し、同時にコンプライアンス上のリスクも軽減できます。


福利厚生を活用した可処分所得の増加

給与額面の向上だけでなく、福利厚生制度を戦略的に活用することで、外国人労働者の実質的な可処分所得を増加させることができます。これは企業にとってもコスト効率の良い施策となる場合があります。


住宅支援の工夫では、住宅手当として現金支給するよりも、企業が借り上げた社宅を提供し、適正な家賃を徴収する方法が効果的です。住宅手当は給与所得として課税対象となりますが、社宅制度では実質的な住居費負担を軽減しながら、所得税の負担を抑えることができます。

食事補助制度も有効な手段です。食事手当の現金支給ではなく、社員食堂の設置や食事券の提供、弁当の補助などにより、外国人労働者の生活費負担を軽減できます。


交通費支給についても、実費弁償として適切に支給することで、外国人労働者の通勤負担を軽減し、可処分所得の実質的な向上に寄与します。

さらに、語学研修費用の会社負担、健康診断の充実、各種保険の加入支援など、外国人労働者の生活基盤安定に資する福利厚生制度を整備することで、優秀な人材の採用と定着率向上を図ることができるでしょう。


これらの対策を総合的に実施することで、法的なコンプライアンスを確保しつつ、外国人労働者にとって魅力的な職場環境を提供することが可能となります。


  1. まとめ

外国人労働者への最低賃金適用は法的義務であり、在留資格による賃金格差や労務管理の複雑さを理解した上で、適切な対策を講じることが不可欠です。税金システムの説明や福利厚生の活用など、総合的なアプローチにより外国人材の定着と満足度向上を実現できます。


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Connect Job編集部


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企業の採用現場でよくある課題や、採用担当者・外国人社員の声など、現場をよく知る社員が編集を担当しています。リアルな現状を知る私たちから、「プロフェッショナル」かつ「現場目線」で役立つコンテンツを発信しています。


運営会社:フォースバレー・コンシェルジュ株式会社(https://www.4th-valley.com




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