外国人労働者の定着率を上げる方法8選|離職率の改善方法や具体的な人事施策を解説
- Hayato Kuroda
- 7月26日
- 読了時間: 15分
更新日:10月15日

近年、日本国内では外国人労働者が年々増え続けています。その一方で、外国人材の定着率は多くの企業にとって深刻な課題となっています。厚生労働省の調査によると、外国人労働者の離職率は日本人よりも高く、短期間で退職するケースも少なくありません。その背景には、言語の壁や文化の違いなど、さまざまな理由が潜んでいます。
本記事では、外国人労働者の離職率を改善し、定着率を上げるためのポイントや具体的な施策を詳しく解説します。適切な対策を講じることで、外国人人材の長期雇用と企業の競争力強化につながるでしょう。
目次
外国人労働者の雇用状況と離職率
まず現在の外国人労働者を取り巻く状況について、雇用数の推移と離職率の実態を確認していきましょう。
外国人労働者は増加傾向
日本で働く外国人労働者は年々増加しており、厚生労働省の「外国人雇用状況」調査によれば2024年10月末時点で約230万人に達しました。
これは前年から約25万人の増加で、過去最多を記録しています。増加率も12.4%と高い水準で推移しており、深刻な人手不足を補う存在として重要性を増しています。
項目 | 数値 |
外国人労働者数(2024年10月末時点) | 約230万人 |
前年比増加人数 | 約25万人の増加 |
対前年増加率 | +12.4% |
在留資格別ではIT・エンジニア・研究職など、「専門的・技術的分野」の外国人労働者が大幅に増えているほか、「永住者」「日本人の配偶者等」といった身分に基づく在留資格、2019年に制度化された「特定技能」の人材も着実に拡大しています。
このように外国人はさまざまな業界で活躍しており、外国人労働者の受け入れはより多様化しています。
外国人労働者の離職傾向
厚生労働省の「外国人雇用状況届出」によると、2020年を通じて外国人労働者の離職者数は毎月2万人〜6万人程度で推移しており、特に3月は入職数を大きく上回る月となっています。
例えば、
2020年3月の離職者数は約6.1万人
5月は約3.5万人
6月は約3.7万人
12月も4.8万人を超える
など、半数近くの月で同月の入職数を上回る離職超過状態となっており、定着率の低さが課題となっている実態が伺えます。
こうした傾向は、雇用の不安定さや職場でのミスマッチ、サポート体制の不足など、構造的な要因と結びついている可能性が高いと言えるでしょう。
ただし、こちらの調査は新型コロナウイルスによる入国規制が緩和される前のデータで、それ以降公式な調査結果は発表されていません。最新のデータについては今後注目しておきましょう。
【独自アンケート】日本で働く外国人労働者が不満に感じていることランキングTOP5

実際に日本で働く外国人労働者は、どのような点に不満を抱いているのでしょうか。
Connect Jobが2025年6月~7月に実施した独自調査では、日本で働く113名の外国人を対象にアンケートを行いました。その結果、以下のような不満やストレスを感じていることが明らかになりました。
順位 | 不満・ストレスの内容 |
1位 | 給与が低いと感じる |
2位 | 評価が曖昧、キャリアアップの機会がない |
3位 | 上司や同僚など社内でのコミュニケーションが難しい |
4位 | 取引先など社外とのコミュニケーションが難しい |
5位 | 相談相手がいない・少ない |
最も多かったのは給与面での不満で、半数近くの人が回答しています。2位には評価制度やキャリアの不安が続きました。また、社内外でのコミュニケーションの困難さも多くの人が感じており、相談相手の不足も課題となっています。
この結果から分かるのは、外国人を雇用するだけでは不十分だということです。給与や評価制度の見直し、コミュニケーションサポートなど、長く働ける環境をつくることが定着率向上の鍵といえるでしょう。
外国人労働者の定着率が低い理由

アンケート結果を踏まえると、外国人労働者の定着率が低い背景には、いくつもの要因が複雑に絡み合っていることが分かります。特に重要とされるのは次の7つの理由です。
日本語力が求める基準に届かない
企業側のサポート体制の不足
希望のキャリア形成ができない
給与や待遇への不満
職場での人間関係に溶け込めない
業務内容と採用条件の相違
文化や価値観の違いからのストレス
これらの課題について、ここから詳しく見ていきましょう。
理由①日本語力が求める基準に届かない
アンケートでコミュニケーションの困難さが上位にランクインしたように、日本語力不足は大きな障壁となっています。入社時には基本的な会話ができても、業務では専門用語や敬語、微妙なニュアンスの理解が必要です。
特に上司からの指示や同僚との連携において、言語の壁が原因で業務効率が下がったり、孤立感を深めたりするケースが少なくありません。企業側も十分な日本語研修を提供していないことが多く、外国人労働者が自力で語学力向上に取り組まざるを得ない状況です。
理由②企業側のサポート体制の不足
相談相手に関する不満がアンケートにあったように、企業のサポート体制が整っていないことも定着率低下の一因となっています。多くの企業では外国人専用の相談窓口がなく、生活面や職場での悩みを気軽に話せる環境が足りていません。
また労働条件や社内制度についての説明も不十分で、外国人労働者が孤立しやすい状況となっているのが実情です。
理由③希望のキャリア形成ができない
アンケート2位に「評価が曖昧、キャリアアップの機会がない」がライクインしています。多くの外国人労働者は日本で長期的にキャリアを積みたいと考えているものの、昇進の基準が不明確だったり、研修制度が整っていなかったりします。
特に言語や文化の違いから日本人と同等の評価を受けにくく、将来への不安から転職や帰国を選択するケースも目立ちます。
理由④給与や待遇への不満
アンケートで最も多かった給与面の不満は、定着率につながる重要な要因です。同じ業務を担当していても日本人より低い給与設定になっていたり、昇給制度が不透明だったりすることが少なくありません。
また住宅手当や交通費などの福利厚生についても、外国人労働者が対象外となるケースがあるなど、総合的な待遇格差が離職につながっています。
理由⑤職場での人間関係に溶け込めない
職場の人間関係は外国人労働者にとって、大きなストレス要因となっている可能性があります。
日本特有の「空気を読む」文化や、飲み会などの社内イベントへの参加が暗黙の了解となっている職場では、外国人が疎外感を感じやすくなります。また、宗教や生活習慣の違いに対する理解不足から、職場で孤立してしまうことも珍しくありません。
理由⑥業務内容と採用条件の相違
採用時に説明された業務内容と実際の仕事が大きく異なるケースも早期離職の原因です。特に技術系の職種で採用されたにも関わらず単純作業ばかりを任されたり、専門性を活かせない部署に配属されたりすることがあります。
また労働時間や休日についても、面接時と実態が違う場合があり、期待とのギャップから不信感を抱く外国人労働者も少なくありません。
理由⑦文化や価値観の違いからのストレス
アンケートでも文化や宗教への理解不足に対する声が上がっているなど、これも見過ごせない問題です。例えばイスラム教徒の礼拝時間への配慮がなかったり、食事制限への理解が得られなかったりすることがあります。
また、日本の長時間労働の文化や、上下関係を重視する組織風土に馴染めず、精神的な負担を感じる外国人労働者も多いのが現状です。
外国人社員の定着率向上・離職防止のための人事施策8選

これまでに明らかになった課題を踏まえ、外国人労働者の定着率を向上させるための具体的な人事施策をご紹介します。これらの取り組みを組み合わせることで、さらなる定着率アップが期待できるでしょう。
特に有効とされるのは以下の8つです。
定期的な面談を実施する
明確な評価基準を設定する
給与体系や労働環境を見直す
日本語学習を支援する
キャリアアップを支援する
ダイバーシティ(多様性)を受け入れる環境づくり
社内コミュニケーションの活性化を図る
生活面での困りごとをサポートする
それではこれらの施策について詳しく見ていきましょう。
①定期的な面談を実施する
外国人社員の離職を防ぐには、問題が深刻になる前に対応することが大切です。そのために月1回程度の定期面談を設け、業務や職場での悩みを聞く時間をつくりましょう。例えば以下のような具体的な質問を用意しておくと、相談しやすい雰囲気になります。
仕事で困っていることはありますか?
職場の人間関係で気になることはありますか?
また面談担当者は文化的な背景を理解している人が好ましく、必要に応じて通訳も用意しましょう。聞き取った内容は記録し、改善できる点は早めに対応することで信頼につながります。
②明確な評価基準を設定する
定着率を高めるには、誰が見ても分かりやすい評価制度が必要です。評価項目や昇進条件は文書化し、外国人社員にも理解できるように説明しましょう。
特に意識したいポイントは次の通りです。
数値化できる評価と定性的な評価を組み合わせる
「なぜこの評価なのか」を具体的に伝える
「空気を読む」といった曖昧な基準は避ける
行動ベースの評価基準を設定する
制度設計や評価面談の際は、公正で納得感のある評価を心がけましょう。
③給与体系や労働環境を見直す
定着率向上のためには給与体系の見直しが必要です。日本人社員と比べて不当に低い給与になっていないか確認し、昇給や賞与の基準も明確にして、将来の収入が見えやすいようにしましょう。
また、労働環境の整備も重要です。例えば次のような配慮が効果的です。
宗教的な配慮のための祈祷室の設置
母国の祝日に合わせた休暇の配慮
多様な働き方に対応した制度づくり
これらの取り組みが、満足度や定着率の向上につながります。
④日本語学習を支援する
コミュニケーションの困難さを解消するため、企業主導の日本語学習支援を実施しましょう。特に業務に必要な専門用語や敬語を中心にした実践的な研修が効果的です。
支援の方法には、次のような選択肢があります。
外部講師を招いた社内研修を行う
オンライン学習システムを導入する
日本語検定の受験費用を補助する
勤務時間内に学習時間を確保する
こうした支援により、外国人社員の負担を減らしながら語学力向上を後押しすることができます。
⑤キャリアアップを支援する
長期的なキャリア形成への不安を解消するため、外国人社員向けのキャリア支援制度を充実させましょう。個人の希望や適性に応じたキャリアプランを作成し、必要なスキル習得のための研修機会を提供することで安心して働くことが可能です。
Connect Jobが外国人採用を支援した企業でもキャリア形成を重視した制度設計が進んでいます。例えば配属前に希望部署との事前面談を行う制度や、社内外の学習機会を自由に選択できるオンライン研修制度など、個人の成長を後押しする取り組みが導入されています。
各企業のキャリア支援の取り組みについて、以下で詳しく見ていきましょう。
企業事例:多様なキャリアパスを提供する株式会社アダストリア
「グローバルワーク」「ニコアンド」など30を超えるブランドを展開するアパレル企業アダストリアでは、約10年前からグローバル採用を実施しています。同社では、人事担当がそれぞれの夢やキャリアを実現する後押しをしているのが特徴です。
2023年に台湾で初の現地選考会を実施し、入社した新入社員たちは現在、それぞれ異なる部署で活躍しています。同社の人事担当者は「社員それぞれの『やりたいこと』を尊重したキャリア形成を行っています」と語ります。
実際に入社した台湾出身の社員は「グローバルマーケティングを担当したい」「お客様が購買意欲を持つような空間設計をしたい」「AI技術を用いて台湾のERP刷新プロジェクトに取り組みたい」などの具体的なキャリア目標を描いており、入社後3ヶ月で目覚ましい成長を見せています。
企業事例:グローバル人材育成に注力する株式会社デンソー
世界トップクラスの自動車部品メーカーであるデンソーでは、2018年からインド工科大学(IIT)での採用活動を6年間継続しています。同社の人材育成の特徴は、外国人社員に対する充実した学習環境の提供です。
外国人の新入社員は、数日間の導入研修を受けた後、すぐにプロジェクトに参加するOJT形式で実務経験を積みます。これに加えて、社内のeラーニングだけでなく、外部の教育コンテンツもオンラインで自由に受講できる環境が整っています。
現場からは「インド出身の方は特に熱心に学び、どんどん吸収していく」「最新技術にも精通しており、新しい知識を活かして現場で活躍している」という声が多く挙がっています。同社では挑戦に積極的で失敗を否定しない社風が全社的に根付いており、外国人社員が自ら学び成長できる土壌が整っているため、向上心のあるインド出身社員も活き活きと活躍できています。
⑥ダイバーシティ(多様性)を受け入れる環境づくり
文化や価値観の違いを尊重する職場環境を整えることで、外国人社員のストレスを軽減し、働きやすさが向上します。
まずは、できる範囲で多様性や異文化への理解を深める取り組みから始めると良いでしょう。例えば一部の管理職やチームリーダーから順に研修を受けるなど、段階的に進める方法も効果的です。
具体的には以下のようなサポートが有効です。
宗教的な配慮(礼拝時間やスペースの確保など)
食事制限への対応(ハラールやベジタリアンメニューの検討)
異文化コミュニケーション研修の実施
さらに、外国人社員の意見を積極的に取り入れ、彼らの経験や知識を企業の成長に活かせる仕組みをつくることも大切です。多様性を企業の強みと捉える文化を育むことが、定着率向上のカギになります。
⑦社内コミュニケーションの活性化を図る
職場での孤立感を解消するため、外国人社員と日本人社員の交流機会を積極的につくりましょう。歓送迎会や社内イベントの開催、部署を超えた交流プログラムなど、自然なコミュニケーションが生まれる場を提供します。
特に効果的なのがメンター制度の導入です。経験豊富な日本人社員や、同じ国出身の先輩社員をメンターとして配置することで、業務面だけでなく生活面での相談もしやすくなります。
メンター制度を通じて外国人社員が安心して働ける環境をつくっている企業事例については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
⑧生活面での困りごとをサポートする
外国人社員にとって住居の確保や行政手続きなど、生活面のサポートは非常に重要です。生活基盤が安定することで不安が減り、仕事にも集中しやすくなります。賃貸契約の保証人代行サービスや市役所での手続き同行など、日本での生活に慣れるまでのサポート体制を整えましょう。
具体的には次のようなサポートが効果的です。
賃貸契約の保証人代行サービス
市役所や役所手続きへの同行
銀行口座開設や携帯電話契約のサポート
健康保険や社会保険の手続き支援
緊急時に対応できる24時間相談体制
また先ほど紹介したようなメンター制度を活用し、生活面についていつでも相談できるようにしておくのも有効です。さらに入国時のサポートや生活の立ち上げについては、Connect Jobがご支援いたします。ビザ申請から入国手続き、生活立ち上げまで一貫してサポートいたします。
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まとめ
外国人労働者の定着率アップは、人手不足の解消と企業の競争力強化において重要な課題です。今回ご紹介した調査結果から、給与面の不満や評価制度の曖昧さ、コミュニケーション不足など、さまざまな改善ポイントが明らかになりました。
これらの課題は決して解決できないものではありません。定期面談や明確な評価基準の設定、日本語学習の支援など、前述の人事施策を組み合わせることで改善が期待できます。特に入国時のサポートや生活面での困りごと解決は、外国人材の安心に直結するポイントといえるでしょう。
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