入管(出入国在留管理庁)とは?業務内容や役割を分かりやすく解説
- Hayato Kuroda
- 5月29日
- 読了時間: 15分
更新日:7月22日

外国人材の採用や雇用を行う企業の人事・総務担当者にとって、「入管」という言葉は頻繁に耳にするものです。しかし、実際に入管とは何か、どのような役割を担っているのかを詳しく理解している人は、意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、入管(出入国在留管理庁)の業務内容や役割、企業担当者が知っておくべき在留カード管理のポイントなどを分かりやすく解説します。外国人採用の実務担当者として必要な知識を身につけ、適切な対応ができるようになりましょう。
目次
入管(出入国在留管理庁)の概要

入管の正式名称は「出入国在留管理庁」という組織で、外国人の出入国、滞在・在留の管理を担っています。法務省の外局として設置されており、本部は東京の霞が関です。
なお「出入国在留管理庁」という名称は長いため、「入管」と呼ばれることが一般的です。外国人雇用に関わるさまざまな手続きを入管で行うことから、企業と入管は切っても切れない関係にあります。
出入国在留管理行政の基本的な役割は以下の3つです。
人権を尊重しつつ、出入国および外国人の在留の公正な管理を図ること
難民等を保護すること
外国人の受け入れ環境整備に係る総合調整を行うこと
外国人労働者の適切な雇用には、入管の役割や手続きを理解することが不可欠です。
在留外国人の管理や雇用に関する組織
入管はルールを守る外国人を積極的に受け入れる一方で、日本の安全・安心を脅かす外国人の入国・在留を阻止し、確実に日本から退去させることにより、円滑かつ厳格な出入国在留管理を実現する役割を担っています。また諸外国や国際機関と協調し、真に保護を必要とする者を迅速かつ確実に保護することを理念に掲げています。
さらに関係機関と連携し、日本国民と日本社会に受け入れた外国人が良き隣人として共に暮らせる共生社会を実現することを目指す方針です。これらを実現することにより、日本の秩序ある社会の実現と経済・社会の健全な発展に貢献しています。
入国管理局と出入国在留管理庁の違い
出入国在留管理庁は入国管理局を基にして再編された庁で、この組織改編は2019年4月に「出入国管理及び難民認定法」の一部改正を受けて行われました。
改変の理由は、不法滞在など外国人の不正行為の管理や「特定技能」の外国人の在留管理をはじめとした業務量の飛躍的増大や質の変化、司令塔の機能を果たすことを明確に位置づける必要性があったからです。
主な違い:
項目 | 入国管理局 | 出入国在留管理庁 |
---|---|---|
組織位置 | 法務省の内部部局 | 法務省の外局 |
設置時期 | 1952年から2019年3月 | 2019年4月以降 |
権限 | 在留資格等の許可は法務大臣に属する | 法務大臣に属するが、庁長官がより強い指揮権と政策調整機能を有し、外国人の受け入れや共生に関する総合的な役割を担当 |
全国の関連組織
出入国在留管理庁の組織は内部部局と施設等機関および地方支分部局からなり、内部部局は総務課、政策課の他、出入国管理部、在留管理支援部が設置されています。
全国に設置された関連組織は以下の通りです:
地方出入国在留管理局:8局(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)
支局:7局(成田空港、羽田空港、横浜、中部空港、関西空港、神戸、那覇)
入国管理センター:2カ所(東日本入国管理センター(茨城県)、大村入国管理センター(長崎県))
出張所:61カ所
企業が外国人を雇用する際は、最寄りの地方出入国在留管理局や支局で必要な手続きを行うことになります。
入管の役割その1:外国人の在留や出入国の審査

入管の主要な役割の1つが、外国人の在留や出入国に関する各種審査です。これらの審査は、日本の安全を守りながら適法な外国人の円滑な移動を確保するという、重要な機能を持っています。
在留管理制度の対応・手続き
在留管理制度は、日本に中長期間在留する外国人を対象とした制度です。この制度の対象となるのは以下を全て満たす外国人です。
3ヶ月以上の在留期間が決定された人
在留資格が「外交」「公用」「短期滞在」などでない人
特別永住者ではない人
在留資格を有している人
これらの条件を満たす中長期在留者には在留カードが交付されます。在留カードは外国人の身分証明書として機能しており、適切な管理が必要になります。企業が外国人を雇用する場合、この在留カードの確認と管理は法的義務となっているため注意が必要です。
出入国審査の対応・手続き
出入国在留管理庁では、コロナ禍後に外国人入国者数が再び増加傾向にある中観光立国の実現に貢献するために問題のない外国人の円滑な入国審査を実施する一方で、日本国民の生命と安全を守るための厳格な審査も行っています。
入国審査の流れは次の3ステップです。
日本の出入国港に到着した外国人は、個人識別情報(指紋および顔写真)を提供する
入国審査官が、パスポートなどを確認して外国人の入国条件適合性を審査する
条件に適合すると認められた場合、パスポートに上陸の許可をする
円滑な出入国審査を実現するため顔認証ゲートやバイオカート、自動化ゲートなどのシステムにより、適法な旅行者の手続き時間短縮が図られています。
在留審査の対応・手続き
在留審査は、日本に滞在している外国人が在留資格の変更や在留期間の延長を申請した際に行われる審査のことです。外国人は、日本に上陸する際に決定された在留資格に基づいて活動が許可されており、その変更や延長には入管による審査が必要となっています。
企業が外国人を雇用する場合、在留資格が就労可能なものであるか、在留期間は十分かを確認することが重要です。期限が切れる前に、在留資格の変更や延長の手続きを行う必要があるため、企業担当者は従業員の在留期間を適切に管理することが求められます。
特別永住者証明書の発行手続き
特別永住者証明書は、特別永住者の法的地位を証明するために交付されるカードのことを指します。特別永住者とは、1991年11月1日に施行された「入管特例法」に基づき、戦前から日本に居住していた旧植民地出身者およびその子孫など、特定の歴史的経緯を持つ外国人が対象となります。
この証明書の発行や更新も入管の重要な業務の1つです。特別永住者は一般の外国人とは異なる法的地位を有するため、企業が雇用する際にも通常の外国人とは異なる点があることを理解しておく必要があるでしょう。
難民認定の対応・手続き
難民の認定や、認定された外国人への保護措置も入管の重要な役割です。難民とは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、「人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」と定義されています。
日本における難民認定の可否を決定するのは出入国在留管理庁であり、難民申請が不認定となった場合でも、難民審査参与員による審理手続きが行われます。法務大臣は参与員の意見を聞いた上で最終的な裁決を行うという仕組みになっているのが特徴的です。
さらに近年では、難民と認定されない場合でも「人道的配慮」を理由に在留資格が与えられるケースもあります。企業が難民認定申請中の外国人や人道的配慮により在留が認められた外国人を雇用する際には、その在留資格や就労制限について確認することが重要です。
入管の役割その2:外国人に対するサポート

出入国在留管理庁は、在留審査や出入国管理だけでなく、日本に在留する外国人の生活のサポートも担っています。
2019年4月の出入国在留管理庁への組織改編により、従来の出入国審査や在留審査などに加えて、外国人の受け入れ環境整備に関する企画立案や総合調整を行う機能が強化されました。
外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)の運営
2020年7月に開所した「外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)」は、外国人の在留支援に関連する4省庁8機関がワンフロアに集結した支援拠点となっています。
同センターには以下の機関が入居しています:
東京出入国在留管理局
東京法務局人権擁護部
日本司法支援センター(法テラス)
東京労働局外国人特別相談・支援室
東京外国人雇用サービスセンター
外務省ビザ・インフォメーション
日本貿易振興機構(ジェトロ)
出入国在留管理庁在留支援課・開示請求窓口
フレスクでは、入居機関が連携しながら在留資格や法律トラブルなどに関する相談対応の他、地方公共団体が設置する一元的相談窓口からの問い合わせへの対応、地方公共団体職員への研修、情報提供などの支援も行っています。
外国人を雇用する企業の担当者にとっても、在留資格や労働関連の相談ができる貴重な窓口となっているのです。
入管の役割その3:不法滞在者に関する取り締まり

入管は日本の安全と安心を守るために、不法滞在者の取り締まりも担っています。不法滞在者に該当するのは以下のような人たちです。
日本で合法的に滞在できる在留資格(ビザ)を所持していない
在留期間を超えて滞在している外国人
具体的には、不法入国、オーバーステイ(在留期間の超過)、偽装結婚などを通して不法に滞在している外国人です。
入管はこうした外国人を法令に基づき国外に退去させることで、国民の安全や利益が害されることを防止する役割を果たしています。
退去強制の対応
摘発などを通じて入管法違反の疑いのある者を確認した場合、違反調査、違反審査、口頭審理などの手続きを経て退去強制が決定されると、その外国人は速やかに国籍国などに送還されます。
ただし全ての違反者が退去強制となるわけではなく、日本での生活歴や家族状況等が考慮され、法務大臣から在留を特別に許可される「在留特別許可」が与えられる場合もあります。
入管法改正による取り締まりの強化
近年では、2023年6月に改正入管法が成立・公布され、2024年6月に全面施行されました。これは送還忌避・長期収容問題を解決するための法改正で、難民認定申請の濫用防止や、送還が事実上困難な者に対する新たな制度の創設などが含まれています。
また、収容に代わる「監理措置制度」が新設され、個別の事情に応じた対応が可能になりました。
雇用主も罰則対象となる不法就労助長罪に注意
企業の人事・総務担当者にとって重要なのは、「不法就労助長罪」の存在です。これは外国人に不法就労をさせたり、不法就労を勧めたりする行為を罰する規定です。外国人を雇用する際は、その在留資格で認められている活動内容や在留期間を確認し、違法な雇用とならないよう注意しなければいけません。
適切な在留資格を持たない外国人の雇用や、許可された活動範囲を超えた就労の斡旋は、企業や担当者が罰則の対象となる可能性があるため、十分な確認と管理が求められるのです。
入管の役割その4:在留に関する相談窓口

入管は外国人本人だけでなく、外国人を雇用する企業にとっても重要な支援機能を提供しています。
外国人在留総合インフォメーションセンター
各地方出入国在留管理局・支局(空港支局を除く)には、「外国人在留総合インフォメーションセンター」が設置されています。このセンターは、主に在留資格などに関する手続きの案内業務を行う相談窓口ですが、近年は外国人が抱える生活上の困りごとへの対応のニーズも高まっていることから、従来の入管手続きの案内に加え、在留支援担当部門と連携し、生活全般に関する相談にも対応しています。
企業の人事・総務担当者が外国人雇用に関する手続きや制度について不明点がある場合、このインフォメーションセンターに問い合わせることができます。
受入環境調整担当官を通じた連携
2019年4月から地方出入国在留管理官署(一部を除く)に配置されたのが「受入環境調整担当官」です。彼らは地方公共団体の要望を踏まえ、在留外国人に関する相談窓口に職員を相談員として適宜派遣する他、相談業務に従事する地方公共団体職員などに対し情報提供や研修を行っています。
また多文化共生施策の推進を図るために担当官の体制配備を図ると共に、地域における情報収集や好事例などの有益情報を地方公共団体などへ展開する役割を担っているのが特徴です。
一元的相談窓口への支援
入管は、生活に関わる悩みや疑問を抱えた在留外国人が適切な情報や相談場所に到達できるよう、地方公共団体が情報提供および相談を行う一元的相談窓口の設置・運営の取り組みを交付金などにより支援しています。
これらの一元的相談窓口では、多言語対応の相談員が配置され、在留外国人のさまざまな相談に対応しています。企業の人事・総務担当者は、自社の外国人従業員がこれらの窓口を活用できるよう情報提供することで、外国人従業員の生活支援に役立てることが可能です。
さらに企業の人事・総務担当者自身も、外国人雇用に関する制度や手続きについて相談することができます。特に地域特有の課題やサービスについては地元の一元的相談窓口が詳しい情報を持っていることが多いため、積極的に活用しましょう。
入管の役割その5:補完的保護対象者に関する手続き

補完的保護対象者制度の概要
出入国在留管理庁は、難民認定制度を運用すると共に、2023年12月から「補完的保護対象者の認定制度」を開始しました。補完的保護対象者とは、難民の定義には該当しないものの、出身国に帰国した場合に深刻な危害を受けるおそれがあり、国際的な保護を必要とする外国人を指します。
この制度は、難民認定制度の透明性向上や、近年増加している難民認定申請者数の急増や申立内容の多様化に対応するために導入されました。日本では難民と認定すべき者を適正に認定する一方で、難民とは認定できない場合であっても、本国情勢などを踏まえ人道上配慮が必要な者には日本への在留を認める取り組みを行っています。
難民認定・補完的保護対象者認定手続き
補完的保護対象者の認定手続きは、既存の難民認定手続きと連動して行われます。外国人からの申請に基づき、難民調査官による事実の調査が行われます。
その後、以下のような流れで審査が進められます:
難民・補完的保護対象者該当性の判断(法務大臣(長官・地方局長))
判断結果として、「難民認定」「難民不認定・補完的保護対象者認定」「難民不認定・補完的保護対象者不認定」のいずれかが決定される
不認定結果に対して不服申立てがなされた場合、審査請求が可能
審査請求を受けて、難民審査参与員の審理や意見書の提出が行われる
法務大臣による裁決(「理由あり」または「理由なし」)
国際社会との連携
出入国在留管理庁は、難民等の適正な保護に関して国際社会と連携しています。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などの関係機関と緊密に協力しながら、以下の理念に基づいて難民認定制度の運用の適正化に取り組んでいるのが特徴です。
難民該当性に関する規範的要素の明確化
難民調査官の能力向上
出身国情報の充実
2021年7月にはUNHCRとの間で協力覚書(MOC)を交換し、2023年3月には「難民該当性判断の手引」を策定・公表するなど、制度の透明性向上に努めています。
また第三国定住による難民受け入れも実施しており、アジア地域に一時滞在する難民の日本への定住を認める取り組みにも積極的です。さらに民間支援団体との連携も推進し、特定非営利活動法人なんみんフォーラムや日本弁護士連合会との協働により、より良い施策の実現に取り組んでいます。
企業としては難民や補完的保護対象者を雇用する際の在留資格や就労制限について理解し、適切に対応することが必要です。また、彼らの社会適応を支援する姿勢も重要となるでしょう。
入管に影響する移民・難民問題について

入管行政は国際的な移民・難民問題の影響を大きく受けています。近年では難民認定申請者数の増加や、送還忌避による長期収容問題などの課題に直面しています。2023年の入管法改正では、送還停止効の例外規定の創設や、収容に代わる監理措置制度の導入など、これらの課題に対応するための制度改革が行われました。
国際社会の一員として、日本は2010年から第三国定住による難民受け入れも実施しています。当初はタイの難民キャンプのミャンマー難民が対象でしたが、現在ではアジア地域に一時滞在する難民に対象が拡大されています。またUNHCRや民間支援団体との連携も強化しており、難民認定制度の透明性向上や難民調査官の能力向上にも取り組む方針です。
外国人を雇用する企業にとっては、こうした移民・難民政策の動向を理解しておくことが、適切な人材管理につながります。特に難民申請中の外国人や人道的配慮による在留資格を持つ外国人を雇用する場合は、その法的地位や就労制限について十分に把握しておくことが重要です。
まとめ
入管は出入国審査や在留管理だけでなく、外国人支援や難民保護まで幅広い役割を担っています。企業が外国人を雇用する際は、適切な在留資格の確認や在留カードの管理が法的義務となっており、不法就労を防止するためにも入管の手続きを理解することが重要です。
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