【企業向け】外国人の脱退一時金とは?厚生年金加入者の支給要件や申請手続きを解説
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- 7月1日
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目次
グローバル化が進む現代において、外国人労働者は多くの日本企業にとって不可欠な存在と言っても過言ではありません。それに伴い、企業の人事・労務担当者が外国人特有の社会保険制度について理解しておく重要性も増しています。
その1つが「脱退一時金」制度です。この制度は、日本で働いた外国人が帰国する際に、これまで納めた年金保険料の一部が払い戻される制度ですが、手続きや要件が複雑で、十分に知られていない現状があります。
この記事では、外国人労働者を雇用する企業の担当者様向けに、厚生年金保険における脱退一時金の制度概要、支給要件、申請手続き、注意点などを網羅的に解説します。従業員への適切な情報提供と円滑な退職・帰国手続きのために、ぜひご活用ください。
外国人労働者の脱退一時金とは?

まず、脱退一時金の基本的な制度概要と、なぜ外国人労働者がこの制度の対象となるのかについて解説していきます。
そもそも脱退一時金制度とは
脱退一時金制度とは、公的年金の保険料を一定期間納めたものの、老齢年金を受け取るための資格期間を満たさずに制度を脱退することになった場合に、それまでに支払った保険料の一部が一時金として返還される仕組みです。
本来、日本の公的年金制度は、老後の生活保障を目的としているため、納めた保険料は将来の年金給付に充てられます。しかし、短期間で日本を離れる外国人など、保険料の支払いが年金受給に結びつきにくいケースも少なくありません 。このような、いわば「保険料の掛け捨て」状態を防ぐために、外国人特有の事情を考慮して設けられた特別な措置が、この脱退一時金制度です 。
外国人労働者にも脱退一時金は適用される?
外国人労働者にも、脱退一時金は適用されます。日本国籍を有しない方が、支給要件を満たして日本を出国する場合、脱退一時金を請求することが可能です 。
なお、脱退一時金制度は、厚生年金保険だけでなく、国民年金の加入者も対象となります。企業で働く外国人材の多くは厚生年金に加入しているため、企業担当者は特に厚生年金の脱退一時金について正しく理解しておくことが重要です。
出典:日本年金機構『脱退一時金の制度』(2025年6月現在)
出典:厚生労働省『脱退一時金について』(2024年11月更新版)
企業が説明する必要性

脱退一時金の請求手続きは、原則として外国人労働者本人が行います。企業が申請を代行するべき、法的な義務はありません。
しかし、多くの外国人労働者にとって、日本の年金制度は複雑で理解が難しいものです。企業が制度について事前に情報提供し、相談に乗ることで、以下のようなメリットが期待できます。
信頼関係の構築とエンゲージメントの向上
慣れない異国での生活において、給与や税金、年金といった制度は外国人従業員にとって大きな不安要素です。企業がこうした専門的な領域で積極的に情報を提供し、親身に相談に応じる姿勢は、「単なる労働力としてではなく、一人の人間として大切にされている」という安心感と信頼を育みます。
さらに、帰国後も「従業員を大切にする企業」というポジティブな評判が本人のコミュニティに広がることで、企業の国際的なブランドイメージ向上や、将来の優秀な外国人材獲得におけるリファラル(紹介)採用にも繋がる可能性もあります。
労務トラブルの未然防止とリスク管理
「知らなかった」「聞いていなかった」という情報格差は、退職後の思わぬトラブルの火種となります。特に、脱退一時金を受け取ることで「それまでの年金加入期間が全てリセットされる」という不可逆的なデメリットは、将来日本へ再入国して働く可能性がある本人にとって極めて重要な情報です。
この点を事前に明確に伝えておくことで、帰国後に「不利な選択をしてしまった」といった不満や、それに伴う労働監督署への相談、SNSでのネガティブな情報発信といったレピュテーションリスクを回避できます。
脱退一時金についての丁寧な説明は、企業のコンプライアンス意識の高さを示すと共に、無用な労務トラブルから会社を守るための重要なリスク管理となるでしょう。
円滑な退職・帰国手続きによる業務負担の軽減
従業員の退職時には、業務の引き継ぎ、在留資格の抹消手続き、社会保険の資格喪失手続きなど、多くの業務が発生します。その中で、外国人本人からの不明瞭な質問が頻発すると、人事・労務担当者の負担はさらに増大してしまうでしょう。
脱退一時金について、必要な書類や手続きの流れをまとめた資料を事前に提供しておくことで、従業員は落ち着いて帰国の準備を進めることができます。これにより、担当者の問い合わせ対応業務が削減されるだけでなく、従業員本人も業務の引き継ぎに集中できるため、最終出社日までの業務が円滑に進められます。
結果として、外国人本人と企業の双方にとって、スムーズで負担の少ないオフボーディング(退職プロセス)が実現するでしょう。
脱退一時金の支給条件(厚生年金保険)

厚生年金保険に加入していた外国人労働者が脱退一時金を受け取るためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
支給の対象となるケース
脱退一時金を受け取れるのは、次の7つの条件を全て満たした場合です 。
日本国籍を有していない
公的年金制度(国民年金または厚生年金保険)の被保険者でない
厚生年金保険の被保険者期間が6ヶ月以上ある
老齢厚生年金の受給資格期間(10年)を満たしていない
障害厚生年金などの年金(障害手当金を含む)を受ける権利を有したことがない
日本国内に住所を有していない
厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日から2年以内に請求する
特に重要なのは、「保険料を6ヶ月以上納めていること」と「年金受給資格期間の10年に満たないこと」、そして「出国後2年以内に請求すること」の3点です。
支給の対象とならないケース
上記の支給要件を1つでも満たさない場合は、脱退一時金を受け取ることはできません。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
厚生年金保険の加入期間が6ヶ月に満たない
日本国籍を取得した
日本国内に住民票を置いたまま
障害厚生年金などを受給している(または受給したことがある)
出国後、請求期限の2年を過ぎてしまった
年金の受給資格期間である10年以上を満たしている
特に注意が必要なのが、最後の「受給資格期間10年」です。これには、後述する社会保障協定による母国での年金加入期間の通算も含まれます。通算して10年以上になる場合は、将来日本の老齢年金を受け取れる可能性があるため、脱退一時金は支給されません 。
出典:日本年金機構『脱退一時金の制度』(2025年6月現在)
脱退一時金の支給条件(国民年金保険)
自営業者や学生などが加入する国民年金についても、脱退一時金の制度があります。要件は厚生年金とほぼ同じです。
支給の対象となるケース
国民年金の脱退一時金は、以下の要件を全て満たす場合に支給されます 。
日本国籍を有していないこと
公的年金制度の被保険者でないこと
国民年金第1号被保険者としての保険料納付済期間などが6ヶ月以上あること※保険料免除期間も、その免除割合に応じて期間に算入されます 。
老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと
障害基礎年金などの年金を受ける権利を有したことがないこと
日本国内に住所を有していないこと
国民年金の資格を喪失した日(最後に日本に住所を有しなくなった日)から2年以内に請求すること
支給の対象とならないケース
厚生年金と同様に、上記の支給要件を1つでも満たさない場合は支給されません。特に、保険料を納めた期間が6ヶ月に満たない場合や、受給資格期間の10年を満たしている場合(社会保障協定による通算期間を含む)は対象外となります。
出典:日本年金機構『脱退一時金の制度』(2025年6月現在)
脱退一時金の請求・申請方法

ここからは、具体的な脱退一時金の請求・申請手続きの流れや必要書類について解説していきます。
請求・申請を行う人物と提出先
請求者:原則、外国人労働者本人
提出先:日本年金機構へ提出(郵送での提出が一般的)
請求・申請時期と提出方法
請求・申請時期と提出方法は以下の通りです。
請求・申請時期
日本に住所を有しなくなった日から2年以内です。この期限を過ぎると請求できなくなるため、注意が必要です。
提出方法
①出国後に海外から郵送する方法が、最も一般的です。
②出国前に日本国内から郵送することも可能です。ただし、請求書が日本年金機構に到着する日が、住民票の転出(予定)日以降である必要があります 。
請求・申請に必要な書類
請求には、以下の書類が必要です 。書類に不備があると返送され、手続きが遅れる原因となるため、企業担当者としても内容を確認し、本人にアドバイスできると親切です。
脱退一時金請求書
日本年金機構のWebサイトからダウンロードできます。英語やベトナム語など、多言語で用意されています 。
パスポート(旅券)の写し
氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格が確認できるページが必要です。
日本国内に住所を有しなくなったことが確認できる書類
住民票の除票の写しなどが該当します。ただし、出国前に市区町村役場で転出届を提出していれば、この書類は原則不要です 。
受取口座を確認できる書類
「銀行名」「支店名」「支店の所在地」「口座番号」および「請求者本人の口座名義」であることが確認できる、銀行発行の証明書などが必要です 。
請求書にはSWIFT(BIC)コードを記入する欄があり、このコードがないと海外送金ができないため、必ず銀行に確認するよう本人に伝えてください 。
基礎年金番号を明らかにすることができる書類
「基礎年金番号通知書」や「年金手帳」、または「ねんきん定期便」などが該当します。
請求・申請時の注意点
脱退一時金の請求・申請時に注意すべきポイントは以下の通りです。
請求書の記入
氏名や住所、口座情報などは、判読可能なアルファベット大文字で正確に記入する必要があります 。
ゆうちょ銀行は利用不可
脱退一時金の受取口座として、ゆうちょ銀行を指定することはできません 。
永住許可の有無
請求書には、日本の永住許可の有無と、許可を得ている場合はその許可日を記入する欄があります 。
所得税の源泉徴収
厚生年金の脱退一時金は、支給時に20.42%の所得税が源泉徴収されます。この税金は、後日、税務署に還付申告をすることで、一部が戻ってくる場合があります 。国民年金の脱退一時金は課税対象外です 。
出典:日本年金機構『脱退一時金を請求する方の手続き』(2025年6月現在)
出典:日本年金機構『脱退一時金請求書』(2025年3月現在)
脱退一時金の計算方法

脱退一時金がいくら受け取れるのかは、外国人労働者にとって最大の関心事の1つです。ここでは厚生年金の計算方法を中心に解説します。
脱退一時金の概算額の計算方法(厚生年金保険)
脱退一時金の概算額を知りたい場合、
加入期間中の年収総額 × 9%
という計算式で大まかな金額を把握できます。
【概算計算式を使った脱退一時金の算出例】
年収300万円で3年間勤務した場合:300万円 × 3年 × 9% = 81万円
この「9%」という数字は、厚生年金保険料率18.3%のうち、本人と会社が半分ずつ負担する「本人負担分(9.15%)」に由来します。ただし、この計算式で算出される金額は概算であり、実際の支給額とは異なる可能性がある点には注意が必要です。
あくまで概算ですが、従業員に金額のイメージを伝える際に便利な方法と言えるでしょう。
支給上限が2021年に3年から5年へ
2021年4月の法改正により、脱退一時金の計算に用いる被保険者期間の上限月数が、36ヶ月(3年)から60ヶ月(5年)に引き上げられました 。
これにより、3年を超えて日本で働き、厚生年金保険料を納めた外国人も、より多くの還付を受けられるようになりました。例えば、被保険者期間が70ヶ月あった場合、改正前は36ヶ月分で計算されていましたが、改正後は60ヶ月分で計算されるため、支給額が大幅に増えます。
ただし、この新しい上限が適用されるのは、厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日が含まれる月の前月(最終月)が2021年4月以降の場合です。最終月が2021年3月以前の場合は、改正前のルールに基づき36ヶ月が上限となります 。
支給上限が延びた理由は「特定技能制度」の在留期間
この支給上限引き上げの背景には、2019年に創設された在留資格「特定技能1号」が大きく関係しています 。特定技能1号の在留期間は通算で上限5年とされており、これに合わせて脱退一時金の支給上限も見直されました。制度創設当時(平成7年)と比べて、3~5年間日本に滞在する外国人が増加したことも理由の一つです 。
さらに今後は、新たに創設される「育成就労制度」(3年間)から特定技能1号(5年間)へ移行し、合計で8年間日本に滞在する外国人が増えることが見込まれています 。これを受け、将来的には支給上限をさらに8年へ引き上げることも検討されています 。
脱退一時金の正確な金額の計算方法(厚生年金保険)
脱退一時金の正確な計算式は以下の通りです。
脱退一時金支給額 = 平均標準報酬額 × 支給率
平均標準報酬額
被保険者期間中の標準報酬月額(毎月の給与)と標準賞与額を合計し、その期間の月数で割った額です 。計算がやや複雑なため、正確な金額は日本年金機構の決定を待つ必要があります。
支給率
「(保険料率 ÷ 2)× 支給率計算に用いる数」で算出されます 。
保険料率
最終月が属する年度の前年10月(最終月が1月~8月の場合は前々年10月)の保険料率が適用されます。平成29年9月以降は18.3%で固定されています 。
支給率計算に用いる数
被保険者期間の月数に応じて、6から60までの間で以下のように定められています 。
厚生年金被保険者期間の月数 | 支給率計算に用いる数 | 支給率 |
6月以上12月未満 | 6 | 0.5 |
12月以上18月未満 | 12 | 1.1 |
18月以上24月未満 | 18 | 1.6 |
24月以上30月未満 | 24 | 2.2 |
30月以上36月未満 | 30 | 2.7 |
36月以上42月未満 | 36 | 3.3 |
42月以上48月未満 | 42 | 3.8 |
48月以上54月未満 | 48 | 4.4 |
54月以上60月未満 | 54 | 4.9 |
60月以上 | 60 | 5.5 |
出典:日本年金機構『脱退一時金請求書』(2025年3月現在)
脱退一時金に関して企業が留意すべき点
企業担当者が外国人労働者に脱退一時金について説明する際、特に注意して伝えるべきポイントが4つあります。
脱退一時金の支給申請手続きは外国人本人または代理人が行う旨を伝える
繰り返しになりますが、申請手続きは本人が行うのが原則です。企業が手続きを代行する義務はありません。ただし、書類の書き方や準備について相談に乗るなど、可能な範囲でサポートすることで、外国人従業員の安心につながります。
脱退一時金を受け取ることによる年金加入期間への影響
忘れてはいけない重要な注意点として、「脱退一時金を受け取ると、その計算の基礎となった被保険者期間は、全てなかったものとみなされる」という決まりがあります。
つまり、将来再び来日して厚生年金に加入したとしても、加入期間はゼロからの再スタートとなります。年金の受給資格を得るために必要な「10年」の期間にも算入されません(合算対象期間にも含まれない) 。
将来、日本で長く働いたり、永住したりする可能性が少しでもあるなら、脱退一時金を受け取らずに加入期間を保持しておく方が有利な場合もあります。このデメリットは必ず受け入れ企業が外国人本人に伝え、慎重に判断するよう促してください。
出典:厚生労働省『脱退一時金について』(2024年11月更新版)
脱退一時金の概算額と実際の支給額の誤差を伝達する
前述の通り、支給額の計算は複雑です。特に平均標準報酬額は、過去の賞与なども含めて計算されるため、個人が正確に算出するのは困難といえます。また、厚生年金の場合は20.42%の所得税が源泉徴収されるため、手取り額はさらに少なくなる点にも留意が必要です。
そのため、「あくまで目安の金額であり、源泉徴収もあるため、手取り額は少なくなる可能性がある」という点を外国人本人に伝えておくと、後の誤解を防ぎやすいでしょう。
2017年8月より老齢年金の受給資格期間が10年に短縮
以前は、日本の老齢年金を受け取るには原則25年の保険料納付期間が必要でした。しかし、2017年8月からは、老齢年金の受給資格期間が10年に大幅短縮されています 。
これにより、外国人材にとっても日本の老齢年金がより身近なものになりました。例えば、育成就労(3年)と特定技能(5年)で8年働き、その後も日本で働き続ける場合など、10年の条件をクリアする可能性は十分に考えられます。
脱退一時金を請求する前に、こうした将来の年金受給の可能性も踏まえて検討するよう、情報提供することが大切です。
出典:厚生労働省『脱退一時金について』(2024年11月更新版)
社会保障協定対象国の場合
出身国によっては、さらに特別な注意が必要です。それが「社会保障協定」の存在です。
「社会保障協定」とは?
日本は、保険料の二重負担を防止し、年金加入期間を通算するために、多くの国と社会保障協定を結んでいます(2024年9月9日現在で23か国と発効済み) 。
この協定には、大きく分けて2つの効果があります。
二重加入の防止
日本と母国、両方の年金制度に加入しなければならないという二重負担を解消します。
年金加入期間の通算
日本の年金加入期間と協定相手国の年金加入期間を合算して、両国の年金受給資格を判断します。
特に重要なのが2番目の「期間通算」です。協定を結んでいる全ての国で期間通算ができるわけではありませんが、アメリカ、ドイツ、フランス、インド、フィリピンなど多くの国との協定にはこの規定が含まれています 。
協定締結国に関する特別な注意点
協定相手国の出身者で、日本の年金加入期間と母国の年金加入期間を合算して10年以上になる場合、その外国人従業員は日本の老齢年金の受給資格を満たすことになります。老齢年金の受給資格を満たす場合、脱退一時金を請求することはできません。
本人がこのことを知らずに脱退一時金を請求しようとするケースも考えられます。出身国が協定を結んでいる国かどうかを確認し、該当する場合は、企業が期間通算の仕組みについて説明し、安易に請求しないようアドバイスすることが極めて重要です。
出典:厚生労働省『脱退一時金について』(2024年11月更新版)
脱退一時金についてよくある質問
最後に、外国人労働者や企業担当者から寄せられることの多い質問と、その回答をまとめました。
脱退一時金が支給される時期はいつですか?
請求書を日本年金機構に提出後、書類に不備や確認事項などがなければ、およそ4ヶ月後に支給されます。書類に不備があるとさらに時間がかかるため、正確な記入と書類準備を心がけましょう。
出典:日本年金機構『脱退一時金の請求書を提出したのですが、受取までにどれくらい時間がかかりますか。』(2025年6月現在)
脱退一時金は一時帰国時でも申請可能ですか?
制度上、請求の要件は「日本国内に住所を有していないこと」です 。したがって、市区町村役場で転出届を提出し、住民票を抜いた状態であれば、一時的な帰国の際でも請求自体は可能です。
出典:厚生労働省『脱退一時金について』(2024年11月更新版)
再入国許可・みなし再入国許可を受けて出国する場合でも、脱退一時金を受け取れますか?
はい、現在の制度では受け取ることができます 。ただし、その場合でも日本国内の市区町村で転出届を提出していることが前提です 。転出届を提出していない場合、再入国許可の有効期間が経過するまでは日本に住所があるとみなされ、請求できません 。
なお、日本に再入国する意思を示す「再入国許可」を得て出国した人にも脱退一時金を支給することについては、制度の趣旨とそぐわないという意見もあり、将来的には支給対象外とする方向で見直しが検討されています 。
出典:厚生労働省『脱退一時金について』(2024年11月更新版)
帰国前に日本国内から請求書を提出することはできますか?
はい、可能です 。ただし、その場合、請求書が日本年金機構に到着する日が、住民票の転出(予定)日以降でなければなりません 。出国直前に慌てて手続きすることがないよう、計画的に準備を進める必要があります。
「永住者」でも脱退一時金を受け取れますか?
制度上は、日本国籍を有していなければ「永住者」の在留資格を持っていても請求は可能です 。しかし、実際にはいくつかの注意点があります。
合算対象期間
永住許可を得た方は、海外に在住していた一定期間を老齢年金の受給資格期間に算入できる「合算対象期間(カラ期間)」という制度の対象となる場合があります 。これにより、実際の保険料納付期間が10年未満でも、合計の受給資格期間が10年を超え、結果的に脱退一時金を受け取れないケースも多いです。
受給者の割合
実際に脱退一時金を受け取っている永住者は極めて少数です。厚生労働省が発表したデータでは、全体の脱退一時金支給決定件数のうち、永住者の割合はわずか0.11%でした 。
永住意思への疑義
永住者が脱退一時金を請求することは、日本で老後を過ごす意思がないとみなされる可能性があり、在留資格の観点からも慎重な判断が求められます。
これらの理由から、永住者の方が脱退一時金を受け取るケースは稀であり、請求前には年金事務所などへ詳細を確認することが強く推奨されます。
出典:厚生労働省『脱退一時金について』(2024年11月更新版)
まとめ:外国人労働者の脱退一時金について正しい理解を
脱退一時金は、日本で短期間働いて帰国する外国人材にとって、掛け捨てになりがちな年金保険料が一部返還される重要な制度です。
企業担当者としては、その手続きを直接行う義務はないものの、外国人従業員が不利益をこうむることなく、自身の権利を正しく行使できるよう、正確な情報を提供しサポートする姿勢が求められます。
外国人従業員の将来的なライフプランまで考え、信頼できる相談相手としてサポートしていくことが、外国人材の定着と活躍、そして企業としての成長にもつながっていくでしょう。
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