外国人労働者の年末調整は必要?対象者・必要書類、仕送りの際の手続きを解説
- info102449
- 7月22日
- 読了時間: 14分
更新日:3 日前

近年、日本で働く外国人労働者の数は増加の一途をたどっています。そんな中、受け入れ企業が外国人労働者を雇用する上で、給与計算や社会保険の手続きと並んで正確な理解が求められるのが「年末調整」です。
この記事では、外国人労働者の年末調整についてまとめました。対象者の判断基準から、必要書類、具体的な手続きの流れなどを網羅的に解説していきます。
外国人雇用に関わる手続きは以下の記事で網羅的に解説しています。
目次
外国人労働者は年末調整の対象?

外国人労働者が年末調整の対象となるかどうかは、国籍ではなく、日本の所得税法における「居住区分」によって決まります。
基本的には、日本の企業に勤務し、年末調整の対象期間中に給与の支払いを受けている人は、年末調整の対象です。
年末調整の基本的な対象者
年末調整の対象者は、その年の最初の給与支払い日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出している人です。国籍を問わず、外国人労働者にも適用されます。
しかし、全ての人が対象となるわけではありません。判断基準となるのが「居住者」「非居住者」の区分です。
居住者・非居住者・非永住者の違い
所得税法では、個人を「居住者」「非居住者」「非永住者」の3つに区分しており、それぞれ課税される所得の範囲や年末調整の有無が異なります。
区分 | 定義 | 課税対象となる所得 | 年末調整 |
居住者 | 日本国内に住所を有する、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する | 全世界の所得(国外源泉所得も含む) | 対象 |
非永住者 | 居住者のうち、日本国籍がなく、かつ過去10年以内の住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下 | ・国内源泉所得・国外源泉所得のうち、国内で支払われたもの・国外源泉所得のうち、国外から送金されたもの | 対象(居住者として) |
非居住者 | 居住者以外 | 日本国内で得た所得(国内源泉所得)のみ | 対象外 |
出典:国税庁『日本における給与に係る源泉徴収制度の概要』(2024年2月更新版)
居住者
日本国内に「住所(生活の本拠)」を持つと客観的に判断される人が「居住者」です。例えば、1年以上の雇用契約のもと家族と共に日本で生活している場合などがこれに該当します。
非永住者
居住者のうち、日本国籍を持たず、かつ過去10年間のうち日本に住んでいた期間が合計5年以下の人は「非永住者」に区分されます。非永住者は、日本国内で得た所得と、国外で得た所得のうち日本国内で支払われたものや日本へ送金されたものが課税対象です。年末調整の手続きは「居住者」と同様に行います。
非居住者
日本に「住所」がなく、滞在期間も1年未満の人は「非居住者」となります。例えば、短期のプロジェクトで数ヶ月だけ来日しているようなケースが該当します。
非居住者は、給与の多寡や扶養親族の有無に関わらず、一律20.42%の税率となるため、源泉徴収で納税が完了するのが一般的です。
年末調整が不要となるケース
「居住者」や「非永住者」であっても、以下のケースに該当する場合は年末調整の対象外となります。
年収が2,000万円を超える場合(本人が確定申告するため)
災害減免法により当年給与の源泉徴収で徴収猶予・還付を受けた場合
出典:国税庁『国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)』(2025年6月更新版)
出典:国税庁『日本における給与に係る源泉徴収制度の概要』(2024年2月更新版)
外国人労働者の年末調整に必要となる書類
年末調整に必要な書類は、基本的には日本人従業員と同じです。ただし、海外に住む家族を扶養に入れている場合は、追加の証明書類が必要となるため注意しましょう。
①給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は、全ての従業員が対象となる「基礎控除」のほか、「配偶者控除」「配偶者特別控除」「所得金額調整控除」を受けるために必要です。
【外国人労働者の場合の書き方のポイント】
配偶者が国外に居住している場合、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるためには、以下のような記載が必要です。
申告書の「配偶者の氏名等」の欄で「非居住者である配偶者」にチェックを入れる
年末調整時には「生計を一にする事実」の欄に、その年に配偶者へ送金した生活費や教育費の合計額を記載する
出典:国税庁『A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告』(2025年7月現在)
②給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、扶養控除や障害者控除、寡婦控除などを受けるために、毎年最初の給与支払い日までに提出してもらう重要な書類です。
【外国人労働者の場合の書き方のポイント】
扶養親族が国外に居住している場合、この申告書の「B 控除対象扶養親族」欄の記入が特に重要です。
「非居住者である親族」欄
該当する親族の欄に必ず○印を付けます。
区分チェックボックス
扶養控除の対象となる国外居住親族は、年齢や状況によって要件が定められています。申告書では、以下のいずれかの区分にチェックを入れる必要があります。
16歳以上30歳未満又は70歳以上
30歳以上70歳未満の者で、以下のいずれかに該当
留学(留学ビザで滞在中)
障害者
38万円以上の支払(その年に生活費・教育費として38万円以上の送金を受けている)
「生計を一にする事実」欄
年末調整時には、その年にその親族へ送金した合計額を記載します。
出典:国税庁『A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告』(2025年7月現在)
③給与所得者の保険料控除申告書

「給与所得者の保険料控除申告書」は、生命保険料控除や地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除を受けるために提出する書類です。
外国人雇用における社会保険については以下の記事で網羅的に解説しています。▶外国人労働者は社会保険加入が必要?厚生年金や健康保険は?雇用の際の手続きや注意点を解説
【外国人労働者の場合の書き方のポイント】
生命保険料控除・地震保険料控除は、国内契約(日本で登録された“外国生命保険会社等”との国内契約含む)が対象で、国外で締結した外国保険は対象外となります。
従業員が母国で加入している生命保険
海外の保険会社と契約したもの
出典:国税庁『A2-3 給与所得者の保険料控除の申告』(2025年7月現在)
国外扶養親族がいる場合の追加書類
居住者が、国外に住む親族(国外居住親族)について扶養控除や配偶者控除などの適用を受けるためには、上記の申告書に加えて、その親族との関係や送金の事実を証明する「確認書類」の提出または提示が必要です。これらの書類は、従業員本人が海外の家族から取り寄せる必要があるため、早めの準備を促しましょう。
確認書類は大きく分けて以下の4種類があり、状況に応じて必要なものを提出します。なお、書類が外国語で作成されている場合は、その翻訳文も添付しなければなりません。
書類の種類 | 内容・目的 | 主な具体例 |
親族関係書類 | 従業員と国外居住親族が法的な親族であることを証明する書類。 | ・日本の国籍の場合:戸籍の附票の写しなど、国または地方公共団体が発行した書類と、その親族のパスポートの写しの両方。 ・外国籍の場合:外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類で、親族の氏名、生年月日、住所(または居所)の記載があるもの(例:戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書など)。 |
送金関係書類 | 従業員がその年に、国外居住親族の生活費や教育費として、必要の都度送金したことを証明する書類。 | ・金融機関が発行した外国送金依頼書の控え ・クレジットカード会社が発行した利用明細書(家族カードなど) |
留学ビザ等書類 | 30歳以上70歳未満の親族が「留学」を理由に控除対象となる場合に、留学中であることを証明する書類。 | ・外国政府が発行したビザ(査証)に類する書類の写し ・外国政府が発行した在留カードに相当する書類の写し |
38万円送金書類 | 30歳以上70歳未満の親族が「38万円以上の送金」を理由に控除対象となる場合に、年間の送金額が38万円以上であることを証明する書類。 | 「送金関係書類」のうち、年間の送金合計額が38万円以上であることが確認できるもの。 |
親族関係書類
日本の戸籍の附票の写しなど+親族のパスポートの写し
外国政府等が発行した書類(戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書など) ※親族の氏名・生年月日・住所(または居所)が記載されているもの
1つの書類で関係を証明できない場合は、複数の書類を組み合わせることも可能。
送金関係書類
金融機関の書類
外国送金依頼書の控など、従業員から親族へ送金したことが分かるもの
クレジットカード会社の書類
親族が使用する家族カードの利用明細書などで、従業員が代金を支払っていることが分かるもの。
注意点
複数人の扶養親族への送金を代表者1人にまとめて行っている場合、その代表者以外の親族の送金関係書類とは認められない。各親族への送金証明が個別に必要。
知人などを介した現金の手渡しは認められない。
【親族の状況別】必要な確認書類一覧(給与所得者の場合)
国外居住親族の状況 | 扶養控除等申告書の提出時に必要な書類 | 年末調整時に必要な書類 |
16歳以上30歳未満 または 70歳以上 | 親族関係書類 | 送金関係書類 |
30歳以上70歳未満 | ||
①留学により非居住者となった者 | 親族関係書類 + 留学ビザ等書類 | 送金関係書類 |
②障害者 | 親族関係書類 | 送金関係書類 |
③年間38万円以上の送金を受けている者 | 親族関係書類 | 38万円送金書類 |
配偶者 | 親族関係書類 | 親族関係書類+送金関係書類 |
障害者控除のみ受ける親族 | 親族関係書類 | 送金関係書類 |
出典:国税庁『国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)』(2025年6月更新版)
出典:国税庁『日本における給与に係る源泉徴収制度の概要』(2024年2月更新版)
国外扶養親族(海外の家族)への仕送りに関する注意点
国外居住親族の扶養控除は手続きが煩雑で、添付書類も多岐にわたります。
仕送りの対象であるか、国外扶養親族の条件を確認する
特に注意が必要なのが、国外に居住する親族を扶養する場合です。扶養控除の対象となるのは、以下のいずれかに該当する人に限定されます。
年齢が16歳以上30歳未満の者
年齢が70歳以上の者
年齢が30歳以上70歳未満の者で、以下のいずれかに該当する者
留学により日本に住所・居所を有しなくなった者
障害者
その年に従業員から生活費または教育費として38万円以上の支払いを受けている者
30歳から69歳までの国外居住親族については「留学」「障害」「38万円以上の送金」など、特別な要件を満たす必要があります。
書類に不備が起こらないよう、従業員とコミュニケーションを
国外扶養親族への仕送りは必要書類が多く、条件も厳しいため、様々な点に注意する必要があります。
早めの準備とアナウンス
「親族関係書類」は、本国の公的機関から取り寄せる必要があり、時間がかかることが予想されます。また、送金の記録も都度保管しておかなければいけません。企業は、対象となる従業員に対しできるだけ早い段階で必要書類についてアナウンスし、計画的に準備を進めるよう促しましょう。
翻訳文の徹底
全ての外国語の書類には、日本語の翻訳文が必須です。翻訳漏れがないか、必ず確認してください。
原本と写しの区別
「親族関係書類」(パスポートの写しを除く)は原則として原本の提出または提示が必要です。一方で、「送金関係書類」や「留学ビザ等書類」は写しでも認められます。この違いを、従業員に明確に伝えるようにしましょう。
出典:国税庁『国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)』(2025年6月更新版)
出典:国税庁『日本における給与に係る源泉徴収制度の概要』(2024年2月更新版)
外国人労働者の年末調整で注意すべきポイント

外国人労働者の年末調整を円滑に進めるためには、特に注意すべき点が5つあります。
税務上の区分を正確に把握する
年末調整の第一歩は、対象となる従業員が「居住者」か「非居住者」かを正しく判定することです。この区分を誤ると、税額の計算ミスや追徴課税といったトラブルに発展しかねません。
判定は、単に在留期間が1年を超えるかどうかだけでなく、契約内容や日本での生活実態(生活の本拠がどこにあるか)を踏まえた総合的な判断です。そのため企業担当者は、従業員の入国目的、役職、雇用契約期間、家族の居住地などを丁寧にヒアリングし、慎重に判断する必要があります。不明な場合は、税務署や税理士に相談するのも良いでしょう。
税金に関する情報の提供と理解促進
日本の年末調整の仕組みや専門用語は、外国人労働者にとって非常に難しく感じます。なぜこの書類が必要なのか、何のために手続きをするのかが理解できないと、協力も得にくくなります。
英語や母国語で簡単な説明資料を作成したり、個別の相談会を設けたりするなど、企業側の丁寧なサポートが求められます。
租税条約による免税の可能性
年末調整とは別枠で、租税条約により日本の源泉徴収が軽減・免除される場合があります。代表例が短期滞在者免税で、下記3つの条件をすべて満たすと給与の日本課税が免除されることがあります。
滞在日数:当該課税年度(または連続する12か月)の日本滞在が183日以下
支払者:給与の支払者が日本の居住者・日本の恒久的施設(PE)でないこと
負担者:給与の負担が日本の恒久的施設(PE)に帰属しないこと
条約適用を受けるには、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」を会社経由で所轄税務署へ提出する必要があります。該当する可能性のある従業員がいる場合は、この制度についても情報提供を行うと親切です。
期限までに提出できない場合は、いったん国内法どおりに源泉徴収され、後日、確定申告や還付手続きで精算する流れとなります。
租税条約を含む、二国間協定については以下の記事で詳しく解説しています。
出典:国税庁『国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)』(2025年6月更新版)
出典:国税庁『日本における給与に係る源泉徴収制度の概要』(2024年2月更新版)
まとめ:外国人労働者の受け入れ企業は年末調整についてもしっかり確認
外国人労働者の年末調整は、日本人従業員の手続きを基本としながらも、「居住区分の判定」と「国外扶養親族に関する手続き」という特有の注意点があります。手続きは複雑に感じるかもしれませんが、一つひとつ手順を確認し、ポイントを押さえて対応しましょう。
何よりも大切なのは、従業員との丁寧なコミュニケーションです。企業側が日本の税制度について正しく理解し、分かりやすく情報提供を行うことで、従業員の不安を解消し、スムーズな手続きを実現できる可能性が高まります。
年末調整は、従業員の所得税額を確定させる重要な業務です。早めの準備と的確な対応で、外国人労働者が安心して働ける環境を整え、良好な労使関係を築いていきましょう。
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