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特定技能「宿泊」とは?ホテル・旅館で従事できる業務や試験概要を解説

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  • 5月23日
  • 読了時間: 13分

更新日:11月11日

特定技能「宿泊」とは?ホテル・旅館で従事できる業務や試験概要を解説

ホテル・旅館業界では深刻な人手不足が課題となっています。フロント業務、接客、清掃など、多岐にわたる業務をこなす人材の確保は急務です。


課題に対する有効な解決策の1つとして注目されているのが、在留資格「特定技能」を活用した外国人材の受け入れです。


この記事では、特定技能「宿泊」の概要や対象となる業務内容、満たすべき要件などを詳しくまとめました。人手不足解消の一手として、特定技能外国人材の活用をぜひご検討ください。


なお、外国人採用の流れや必要な手続きはこちらの記事でご確認いただけます。


初めての外国人採用ガイド(選考~内定編)

目次


  1. 特定技能「宿泊」分野とは?

特定技能「宿泊」分野とは?

特定技能「宿泊」は、ホテル、旅館など、宿泊業界における人手不足に対応するため、2019年4月に創設された在留資格「特定技能」の一分野です。専門的な技能や知識を持つ外国人材が、日本の宿泊施設で即戦力として活躍することを目的としています。


この制度により、企業はこれまで採用が難しかったフロント業務や接客などの宿泊サービスに加え、それに付随する清掃やベッドメイキングといった業務にも従事可能な外国人材を雇用できるようになりました。ただし、主たる業務がフロントや接客などであることが前提です。


初めての外国人採用ガイド(選考~内定編)


特定技能「宿泊」創設の背景は人手不足

特定技能制度が創設される以前から、日本の宿泊業界は慢性的な人手不足に悩まされていました。少子高齢化による生産年齢人口の減少に加え、宿泊業特有の不規則な勤務時間や業務の多様さから、日本人従業員の採用が困難な状況が続いています。


特に、インバウンド需要の増加に伴い、多言語対応が可能な人材や、多様な文化背景を持つ顧客への対応ができる人材のニーズが高まっています。しかし、従来の在留資格では、フロント業務や接客などを主たる業務として外国人材を雇用することには制限がありました。


そこで宿泊業界の深刻な人手不足を解消し、サービスの質を維持・向上させることを目的として、特定技能「宿泊」分野が設けられました。ホテルや旅館は必要なスキルを持つ外国人材をより柔軟に受け入れられるようになり、業界全体の活性化が期待されています。


特定技能「宿泊」の1号・2号の違い

特定技能「宿泊」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの区分があります。それぞれの主な違いは以下の通りです。

区分

技能水準

在留期間

家族帯同

主な対象業務

特定技能1号

一定の専門性・技能を要する業務に対応できるレベル

通算上限5年

不可

フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊業務全般

特定技能2号

熟練した技能(管理者・監督者レベル)

上限なし(更新可)

可能

1号の業務に加え、管理者・監督者としての業務

企業にとっては、1号人材の育成を通じて2号人材へステップアップしてもらうことで、より高度な業務を任せられる人材を安定的に確保できます。


特定技能1号、2号の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。


出典:出入国在留管理庁『宿泊分野』(2025年5月時点)


初めての外国人採用ガイド(選考~内定編)

  1. 特定技能「宿泊」の外国人材が従事できるホテル・旅館の業務内容

ホテルや旅館で認められる特定技能「宿泊」の業務内容

特定技能「宿泊」の在留資格を持つ外国人材は、ホテルや旅館における幅広い業務に従事することが認められています。具体的には、以下のような業務が挙げられます。


  • フロント業務:チェックイン・チェックアウト対応、予約管理、電話応対、コンシェルジュ業務など

  • 企画・広報業務:宿泊プランの企画立案、ウェブサイトやSNSでの情報発信、イベントの企画・運営、海外エージェントとの連携など

  • 接客業務:ロビーでの案内、客室への誘導、館内施設の説明、観光情報の提供、クレーム対応など

  • レストランサービス業務:宿泊施設内のレストランや宴会場での注文への応対やサービス(配膳・片付け)、料理の下ごしらえ・盛りつけ等の業務など


これらの業務は、宿泊サービスの提供に不可欠であり、一定の専門性やコミュニケーション能力が求められます。特定技能外国人は、これらの業務を通じて、宿泊施設の運営に貢献することが期待されています。



ベッドメイキング・客室清掃などの付随する単純労働も可能

従来の就労ビザ(例:「技術・人文知識・国際業務」)では、単純労働とみなされる業務への従事は原則として認められませんでした。しかし、特定技能「宿泊」では、ホテル・旅館の運営においてこれらの業務が不可分であることを考慮し、主たる業務(フロント、接客など)を行う上で必要となる範囲であれば、これらの関連業務も担当することが可能です。


ただし、 フロント業務や接客業務などの専門的な業務に従事することが前提です。主たる業務がベッドメイキングや清掃のみであるといった働き方は認められないので、注意してください。


特定技能「宿泊」で従事できない業務は?

特定技能「宿泊」において、以下の業務に従事させることはできません。


●宿泊業務と関連性のない業務

  • 農作業(例:ホテル敷地内の農園での作業)

  • 製造業務(例:ホテル内で販売する物品の製造)

  • 送迎ドライバー(旅客自動車運送事業にあたる場合など、別途必要な資格・許可がある場合)

  • 風俗営業関連業務(接待を伴う業務など)


●専門的な資格が必要な業務

  • 調理師免許が必要な調理業務(調理補助は可能)

  • 旅行業務取扱管理者の資格が必要な業務

  • その他、法律で定められた資格が必要な業務


●単純労働のみを目的とする業務

  • 客室清掃のみ、ベッドメイキングのみ、皿洗いのみといった、専門性を伴わない単純作業のみに従事させることはできない


これらの業務に従事させる場合は、特定技能「宿泊」以外の適切な在留資格が必要です。

(例:調理師なら「技能」、専門職なら「技術・人文知識・国際業務」など)


雇用契約を結ぶ際には、担当させる業務内容が特定技能「宿泊」の範囲内であることを十分に確認しましょう。


特定技能人材を採用できる業種については以下の記事で網羅的にご紹介しています。


初めての外国人採用ガイド(選考~内定編)

  1. 外国人材が特定技能1号「宿泊」を取得する方法

特定技能1号「宿泊」を取得する方法

外国人材が特定技能1号「宿泊」の在留資格を取得するためには、主に2つのルートがあります。


  • 方法1 「宿泊分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」に合格する

  • 方法2 技能実習2号から特定技能1号へ移行する


2つのルートについて、以下で詳しく解説していきます。


方法1: ①「宿泊分野特定技能1号評価試験」に合格する

「宿泊分野特定技能1号評価試験」は、ホテルや旅館で働く上で必要な専門知識や技能について、以下5つのカテゴリから出題されます。


  • フロント業務

  • 広報・企画業務

  • 接客業務

  • レストランサービス業務

  • 安全衛生その他基礎知識


試験は国内外で実施されており、試験に合格することで宿泊分野における基本的な業務遂行能力があることが証明されます。


方法1: ②「日本語能力試験」に合格する

宿泊業務では、顧客や同僚との円滑なコミュニケーションが不可欠です。そのため、特定技能1号「宿泊」を取得するには、一定レベル以上の日本語能力も必要とされます。


具体的には、以下のいずれかの日本語試験に合格しなければいけません。


  • 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic):A2レベル以上に合格

  • 日本語能力試験(JLPT):N4以上に合格


これらの試験は、業務に必要な基本的な日本語の理解力(聞く、話す、読む、書く)があることを証明するものです。


日本語能力試験について詳しくは、以下の記事をご覧ください。



②技能実習2号から特定技能1号へ移行する

日本の技能実習制度において、「旅館・ホテル」関連の職種で技能実習2号を良好に修了した外国人は、上記の「宿泊分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」の両方が免除され、特定技能1号「宿泊」へ移行することができます。


技能実習2号から特定技能1号へ移行する場合、技能実習を通じて既に日本の宿泊施設での実務経験と一定の日本語能力を身につけているため、よりスムーズに特定技能人材として活躍することができるでしょう。多くの企業にとって、技能実習生を受け入れ、その後特定技能へ移行してもらうことは、安定した人材確保の有効な手段となり得るのです。


出典:出入国在留管理庁『宿泊分野』(2025年5月時点)


初めての外国人採用ガイド(内定~入社編)

  1. 外国人材が特定技能2号「宿泊」を取得する方法

外国人材が特定技能2号「宿泊」を取得する方法

特定技能1号で経験を積んだ外国人材は、さらに高度なスキルを証明することで、在留期間の制限がなく、家族帯同も可能な特定技能2号「宿泊」へ移行することができます。そのための主な要件は以下の通りです。


  • ①「宿泊分野特定技能2号評価試験」に合格する

  • ②宿泊施設で2年以上の実務を経験していること


それぞれ詳しく見ていきましょう。


①「宿泊分野特定技能2号評価試験」に合格する

特定技能2号を取得するためには、新たに設定された「宿泊分野特定技能2号評価試験」に合格しなければいけません。1号の試験よりも高度な内容となり、複数の従業員を指導・監督しながら業務を遂行できる、いわば管理者・監督者レベルの知識と技能を測るものです。フロント、接客、料飲サービス、安全衛生管理、部下指導など、より幅広い分野での専門性が問われます。



②宿泊施設で2年以上の実務を経験していること

特定技能2号の申請には、日本の宿泊施設において2年以上の実務経験、特に管理者または監督者としての実務経験が必要です。これは、実際に部下の指導や業務管理に携わった経験が求められることを意味します。


実務経験を通じて得られたリーダーシップやマネジメント能力が、特定技能2号に求められる「熟練した技能」の重要な要素となります。


出典:出入国在留管理庁『宿泊分野』(2025年5月時点)


初めての外国人採用ガイド(選考~内定編)

  1. 特定技能「宿泊」の外国人材を採用するホテル・旅館側の要件

特定技能「宿泊」の外国人材を採用するホテル・旅館側の要件

特定技能「宿泊」の外国人材を受け入れるためには、外国人材側の要件だけでなく、受け入れ企業(ホテル・旅館)側も以下の要件を満たさなければいけません。


  • 施設運営に必要な「旅館・ホテル営業」の許可を得る

  • 宿泊分野特定技能協議会へ加入する

  • 定期的に支援状況を報告する


それぞれの概要を見ていきましょう。


施設運営に必要な「旅館・ホテル営業」の許可を得る

大前提として、外国人材を受け入れるホテルや旅館は、旅館業法に基づく「旅館・ホテル営業」の許可を得なければいけません。これは、適法に宿泊施設を運営していることの証明となります。申請時には、営業許可証の写しなどを提出する必要があります。


宿泊分野特定技能協議会への加入する

特定技能「宿泊」の外国人材を受け入れる企業は、国土交通省(観光庁)が設置・運営する「宿泊分野特定技能協議会」に加入することが義務付けられています。


この協議会は、制度の適正な運用、受け入れ企業が必要な情報の共有、地域ごとの人手不足状況の把握などを目的としています。企業は、初回の在留申請の段階で“協議会構成員であることを証する書類”の提出が必要です。


加入手続きや活動内容については、観光庁の宿泊分野特定技能協議会に関するWebサイトで確認できます。


定期的に支援状況を報告する

特定技能外国人を受け入れた企業(または支援を委託された登録支援機関)は、外国人材に対して実施している支援の状況について、定期的に出入国在留管理庁(地方出入国在留管理局)へ報告しなければなりません。この報告内容には、給与の支払い状況、労働時間、住居の状況、相談・苦情への対応状況などが該当します。


2025年4月以降、定期届出は四半期に1度から、年1回に変更となりました。

国は、報告を通じて特定技能制度が適切に運用され、外国人材の権利が守られているかを確認しています。


特定技能の定期報告、登録支援機関については以下の記事で詳しく解説しています。



初めての外国人採用ガイド(入社~定着編)

  1. 特定技能「宿泊」についてよくある質問

特定技能「宿泊」について、よくある質問と回答をまとめました。


特定技能2号の宿泊の合格率はどれくらいですか?

2025年6月に実施された、宿泊分野特定技能2号評価試験の合格率は9.1%でした。また、2024年の合格率をまとめた表が以下の通りです。

試験日

受験者

合格者

合格率

2024年3月

23人

1人

4.4%

2024年10月

7人

1人

14.3%

2024年11月

3人

3人

100%

100%を記録したこともありますが、基本的に合格率は低い傾向にあります。


特定技能試験は年に何回ありますか?

宿泊分野の特定技能試験は、国内開催の場合毎月開催されています。国内・国外ともにプロメトリックから具体的な日程を選択して申込を行います。


詳細は出入国在留管理庁のホームページからご確認ください。


特定技能の宿泊業でベッドメイキングはできますか?

フロント業務や接客業務などと合わせてベッドメイキングを行うことは可能です。しかし、ベッドメイキングを主業務とする場合は、特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を取得しなければいけません。


特定技能「ビルクリーニング」については以下の記事で詳しく解説しています。


特定技能「宿泊」の制度はいつから始まりましたか?

2019年4月1日に在留資格「特定技能」が創設され、同時に「宿泊」分野での受け入れが可能になりました。


初めての外国人採用ガイド(選考~内定編)

  1. まとめ

深刻化するホテル・旅館業界の人手不足に対し、特定技能「宿泊」制度は有効な解決策の一つです。フロント、接客、企画・広報から、付随する清掃業務まで、幅広い業務を担える即戦力人材の採用を可能にします。


特定技能1号から、熟練した技能を持つ2号へのステップアップも可能となり、外国人材が長期的に日本でキャリアを築ける環境も整いつつあります。企業側は、必要な許可の取得、協議会への加入、適切な支援体制の構築といった要件を満たすことで、意欲ある外国人材を迎え入れ、サービス品質の向上と事業の安定化を図ることができるでしょう。



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Connect Job編集部


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企業の採用現場でよくある課題や、採用担当者・外国人社員の声など、現場をよく知る社員が編集を担当しています。リアルな現状を知る私たちから、「プロフェッショナル」かつ「現場目線」で役立つコンテンツを発信しています。


運営会社:フォースバレー・コンシェルジュ株式会社(https://www.4th-valley.com



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