特定技能「産業機械製造業」とは?現在の工業製品製造業分野に統合されるまでの経緯や要件、現在の区分を解説
- Hayato Kuroda
- 7月24日
- 読了時間: 12分

産業機械製造業は日本の製造業分野における特定技能の在留資格として、外国人材の受け入れを支える重要な分野です。製造現場の多能工化に伴うニーズを受け、2022年4月には従来の19業務区分が見直され、「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3区分に統合されました。
その後、さらなる業務多様化や現場のニーズを反映し、2024年3月の閣議決定により新たに7区分が追加され、現在は合計10区分で運用されています。
本記事では分野が統合された経緯や現在の区分、具体的な業務内容と受け入れ要件について詳しく解説します。外国人材の採用を検討している企業にとって、最新の制度を正しく理解することは成功への重要な第一歩となるでしょう。
目次
特定技能「産業機械製造業」とは
日本では少子高齢化の影響によりさまざまな業界で人材不足が進んでおり、この問題を解決するため新設されたのが在留資格「特定技能」です。
特定技能の在留資格が認められているのは、特に人手不足が深刻とされる16の分野であり、「産業機械製造業」は元々その1つでした。しかし2022年、製造に関する他の2分野と統合して「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野となり、さらに2024年には「工業製品製造業分野」へと名称が変更されました。
産業機械製造とは、工場や事務所内で利用される機械全般のことを指します。経済産業省の工業統計表では、「産業機械とは建設機械・運搬機械・工作機械・農業機械などの業務用機械全般を指し、家庭用電化製品とは区別される」とされています。
産業機械製造業が設立された背景
当時は国内で少子高齢化が進む中、製造業全体で深刻な人材不足が顕在化していました。経済産業省が2017年末に行ったアンケート調査では、人材確保について「特に課題はない」と回答した企業が前年の約19%から約6%に大幅に減少する一方、「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」との回答は約23%から約32%に増加しました。
こうした背景から、より実践的な労働力として外国人材を受け入れる特定技能制度が創設され、産業機械製造業もその対象分野の1つとして設立されたのです。
特定技能「産業機械製造業」は2022年に統合、2024年に「工業製品製造業分野」へ名称変更

年 | 主な出来事 |
2022年4月 | 「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」の3分野が統合され、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」が創設される(4月26日閣議決定) |
2022年5月 | 上記統合に伴い、関係省令を施行 在留資格認定証明書の交付制限措置が終了 |
2024年9月 | 分野名を「工業製品製造業分野」へと変更(2024年3月に発表) |
製造業における特定技能制度は、運用開始後に大きな再編を迎えました。制度の活用が進む中で、1つの事業所が複数の分野にまたがって外国人材を受け入れるケースが増加していました。
しかし、当時は分野ごとに試験制度や管理団体、登録支援機関の登録などが個別に設定されており、事業者や業界団体からは「手続きが煩雑」「事務負担が重い」といった課題が多く指摘されていました。
こうした現場の声を踏まえ、2022年4月26日には、以下の3つの分野
素形材産業分野
産業機械製造業分野
電気・電子情報関連産業分野
を統合し、新たに「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」が創設されることが閣議決定されました5月には関係省令が施行され、これにより試験制度や登録支援機関の手続きが一本化され、運用が大幅に簡素化されました。
なお、この分野統合と同時期に、新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に停止されていた在留資格認定証明書の交付制限措置も終了し、外国人材の受け入れ体制が再び本格化しました。
その後、制度のさらなる明確化を図るため、2024年3月には新たな制度整理が発表され、同年9月からは分野名称を現在の「工業製品製造業分野」へと変更。これにより、対象となる業務や試験区分がより整理・統一され、受け入れ企業や外国人材にとっても分かりやすい制度設計となっています。
現在はどの特定技能に含まれているのか?
旧「産業機械製造業分野」は現在「工業製品製造業分野」として運用されており、その中で10の業務区分に分類されています。もともとは2022年4月の統合により「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3区分に整理されましたが、2024年3月に新たに7区分が追加され、現在は10区分となっています。
【追加された7区分】
紙器・段ボール箱製造
コンクリート製品製造
RPF製造
陶磁器製品製造
印刷・製本
紡織製品製造
縫製
これにより、従来の産業機械製造業で求められていた幅広い技能が、より専門的に整理され、事業者は外国人材の技能や業務内容に合わせて最適な区分で採用できるようになりました。統合と制度改正によって手続きも簡素化され、複数技能が必要な現場でも効率的な人材採用が実現できる仕組みとなっています。
特定技能「産業機械製造業」(現:工業製品製造業分野)で従事できる業務

旧「産業機械製造業分野」で対象となっていた業務は、工業製品製造業分野とされ、現在は10の業務区分に細分化されています。2025年7月時点では、以下の区分ごとに特定技能1号の従事が可能です。
区分名 | 対象となる業務例 |
機械金属加工 | 鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装 強化プラスチック成形、金属熱処理業(2024年度に追加) |
電気電子機器組立て | 機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装 強化プラスチック成形(2024年度に追加) |
金属表面処理 | めっき、アルミニウム陽極酸化処理 |
紙器・段ボール箱製造 | 紙器・段ボール箱製造 |
コンクリート製品製造 | コンクリート製品製造 |
RPF製造 | RPF製造 |
陶磁器製品製造 | 陶磁器工業製品製造 |
印刷・製本 | 印刷、製本 |
紡織製品製造 | 紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造、カーペット製造 |
縫製 | 婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造、寝具製作、帆布製品製造、布はく縫製、座席シート縫製 |
このように、従来の「産業機械製造業分野」で想定されていた広範な業務内容が、現在は明確な技能区分ごとに整理され、業務とスキルの対応がより分かりやすくなっています。
また各区分では、職種別に定められた「特定技能1号評価試験」に合格した外国人材が、企業の実務に即した形で従事可能となっています。
特定技能「産業機械製造業」(現:工業製品製造業分野)の取得方法

外国人材が特定技能1号の在留資格を取得するためには、以下の2つの方法があります。
製造分野特定技能1号評価試験と日本語試験の両方に合格する
技能実習2号を修了してから移行する
現在は制度統合により「工業製品製造業分野」として運用されていますが、取得方法の基本的な仕組みは変わりません。ただし、試験区分や内容については最新の情報をご確認ください。
それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
方法①特定技能1号試験と日本語試験に合格する
特定技能1号を取得する1つ目の方法は、「製造分野特定技能1号評価試験」と規定の日本語試験の両方に合格することです。
製造分野特定技能1号評価試験の概要
製造分野特定技能1号評価試験の各項目は以下の通りです。
項目 | 内容 |
実施主体 | 工業製品製造技能人材機構(JAIM)※経産省所管 |
試験形式 | 学科試験・実技試験 |
試験言語 | 日本語 |
実施場所 | 海外(インドネシアなど)および国内 |
技能レベル | 技能検定3級相当(技能実習2号修了相当) |
合否基準 | 学科試験:正答率65% 以上 実技試験:正答率60% 以上 |
試験区分数 | 10区分(下記参照) |
【対象となる工業製品製造業分野の10区分】
受験者は自身の専門技能によって以下の10区分から1つを受験します。
機械金属加工
電気電子機器組立て
金属表面処理
紙器・段ボール箱製造
コンクリート製品製造
RPF製造
陶磁器製品製造
印刷・製本
紡織製品製造
縫製
合格後は、選んだ試験区分に応じた業務に従事できる在留資格が付与され、事業者側もその技能を活かせる形で外国人材を配置することが可能になります。
日本語試験の概要
日本語試験の概要は以下の通りです。
試験名 | レベル・内容 | 実施回数 |
日本語能力試験(JLPT) | N4以上が必要 | 年2回 |
国際交流基金日本語基礎テスト | 日常生活でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定 | 年6回 |
方法②技能実習2号修了から移行する
2つ目の方法は、産業機械製造業に該当する技能実習2号を修了してから移行することです。
技能実習制度は1993年に創設された外国人材育成制度で、2号修了者は一定の技能水準と日本語力があるとみなされます。そのため、評価試験および日本語試験は原則免除されます。ただし、技能実習での職種と特定技能での対象業務が一致していることが前提となるため、移行を検討する場合は事前確認が必要です。
技能実習は最長5年間ですが、特定技能1号に移行することでさらに最長5年間の滞在が可能となり、通算で最大10年間の在留が可能となります。
特定技能「産業機械製造業」(現:工業製品製造業分野)の受け入れ要件

工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる際は、以下のように企業が満たすべき要件があります。
適切な業種分類への該当
協議会への加入
支援体制の整備
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
受け入れ企業が日本標準産業分類に該当する
工業製品製造業分野(旧:特定技能「産業機械製造業」)で外国人材を受け入れるためには、企業が日本標準産業分類の「製造業」に該当している必要があります。これは制度上、適切な業種の事業所でのみ外国人材を雇用できるよう定められているためです。
JAIM(工業製品製造技能人材機構)へ加入する
工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる企業は「JAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構)」への加入が必要です。
JAIMは製造業の現場で特定技能外国人の受け入れが円滑に行えるよう支援するために設立された業界団体で、受け入れ企業と関係機関との調整や名簿管理などを担います。従来は「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(協議会)」が管理を担当していましたが、今後はJAIMがその業務を引き継ぐ形となります。
そのため、これまで協議会に登録していた企業も、改めてJAIMへの入会手続きを行う必要があります。
支援体制の義務を負う
受け入れ企業は、特定技能外国人に対する包括的な支援を行う義務があります。具体的には、日常生活に関する相談対応、住居確保の支援、生活オリエンテーションの実施、日本語学習機会の提供などが含まれます。
支援計画の作成と適切な実施が求められ、外国人材が安心して働けるよう生活面までサポートすることが重要です。支援業務は登録支援機関に委託することも可能ですが、企業としての責任は変わりません。
特定技能制度全体の受け入れ要件についてより詳しく知りたい人は以下の記事をご覧ください。
まとめ
特定技能「産業機械製造業」は、2022年の制度見直しで関連する製造業3分野が統合され、さらに2024年には「工業製品製造業分野」として名称が変更されました。業務区分も、当初の3区分から2024年の制度改正を経て10区分へと拡大し、現場ニーズに対応できる体制が整えられています。
外国人材を受け入れるには業種分類の確認、協議会への加入、包括的な支援体制の整備が必要となります。制度変更により手続きは簡素化されましたが、最新の要件を正しく理解し、外国人材が安心して働ける環境を整備することが効果的な人材採用のポイントといえるでしょう。
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