外国人労働者の採用時に知っておくべき法律|違法雇用・不法就労の防ぎ方や注意点を解説
- Hayato Kuroda
- 1 日前
- 読了時間: 15分

外国人を採用しようとする際、多くの企業が不安に感じるのが法律面の問題です。たとえば、在留資格を確認せずに働かせてしまうと、不法就労助長罪に問われるおそれがあります。
そこで本記事では、外国人雇用に関する主要な法律(入管法・労働基準法など)や在留カードの確認方法、労働条件の明示など、採用時に知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。適切な手続きを理解することで、安心して外国人材を受け入れる体制を整えましょう。
目次
外国人労働者の雇用に関わる重要な法律

外国人労働者を雇用する際に企業が守るべき法律は少なくありません。労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法といった一般的な労働法だけでなく、外国人特有のルールを定めた出入国管理及び難民認定法(入管法)なども重要なポイントとなります。
これらの法律で特に注意すべきは、日本人労働者に適用される法律が外国人労働者にも同じように適用されるということです。
法律を順守するのは法的義務であるだけでなく、信頼関係を築き、安定した戦力として活躍してもらうためにも欠かせません。反対に、違反した場合は厳しい罰則や信用の失墜といった大きなリスクにつながるため、事前に正しく理解しておきましょう。
それではそれぞれの法律について詳しく解説していきます。
労働基準法

外国人労働者の雇用において最も基本となるのが労働基準法です。この法律により、外国人労働者にも日本人労働者と同じ労働条件が適用されます。
労働基準法第3条には「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定められています。この均等待遇の原則により、賃金水準や労働時間等の条件において、国籍を理由とした差別は認められません。
具体的には、以下のような権利が外国人にも認められています。
最低賃金の保証
時間外労働に対する割増賃金の支払い
年次有給休暇の付与
労働時間の上限規制
これらに違反してしまうと労働基準監督署から指導や是正勧告を受ける可能性があり、悪質なケースでは罰金や懲役が科される場合もあるので、企業側は十分に配慮しましょう。
入管法(出入国管理及び難民認定法)

入管法とは、正式名称を「出入国管理及び難民認定法」といい、日本に出入国する全ての人と日本に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図ることを目的とした法律です。
外国人が日本で働くためには、入管法で定められた適切な在留資格を取得することが必要です。企業が外国人を雇用する際は、その人が持つ在留資格で該当する業務に従事できるかどうかを必ず確認しなければなりません。適切な就労資格を持たない外国人を雇用してしまうと、不法就労助長罪に問われる可能性があります。
近年は外国人人材の必要性の高まりに伴い入管法が頻繁に改正されているため、最新の内容を把握しておくことが重要です。2024年にあった入管法改正内容やこれまでの経緯など、入管法の詳細は以下をご覧ください。
労働施策総合推進法(旧:雇用対策法)に基づく手続き

労働施策総合推進法(旧:雇用対策法)は、少子高齢化による人口構造の変化に対応し、雇用の安定や需給のバランスを整えることを目的とした法律です。この法律において、外国人雇用する企業にもいくつかの義務が課されています。
外国人雇用状況の届出義務
企業は外国人を雇用した場合、正社員やアルバイトといった雇用形態に関係なく氏名や在留資格などをハローワークに届け出なければなりません。これは労働施策総合推進法第28条「外国人雇用状況の届出等」に規定されており、目的は以下のとおりです。
外国人の雇用環境の改善
離職後の再就職支援
不法就労の防止
離職時に必要な届出
外国人雇用状況の届出は、雇用時だけでなく離職時にも必要です。離職届出では、離職年月日や離職理由といった情報も併せて報告することが求められます。離職時の手続きは特に忘れやすいため注意しましょう。
届出の具体的な方法
届出はハローワークに提出します。雇用保険に加入させる場合は、専用の届出ではなく雇用保険加入の際に提出する「雇用保険被保険者資格取得届」で代用できます。手続きは比較的簡単で、インターネットからの届出も可能です。
ただし雇用保険の加入・非加入で手続きが異なること、法定の届出期限があること、労働時間の長さに関係なく届出が必要なことに注意しなければいけません。届出を怠ってしまうと30万円以下の罰金が科されることがあります。
雇用管理改善のため企業に求められる指針
外国人労働者は日本の雇用慣行や求職活動の情報が不足しがちです。これにより外国人が能力を発揮できないことがないよう、労働施策総合推進法第8条では、事業主に対して「外国人が仕事に慣れやすくなるように配慮すること」「適切な雇用管理を行うこと」「離職時には再就職の手助けをすること」などの努力をするよう求めています。
具体的には、以下のような取り組みがポイントです。
労働条件をわかりやすく伝える
職場でのコミュニケーションをサポートする
安全衛生に関する教育を実施する
苦情や相談を受け付ける窓口を整える
これらの指針を守ることで外国人スタッフが安心して働けるようになり、定着率の向上や職場全体の生産性アップにもつながるでしょう。
最低賃金の法律と企業の義務

最低賃金法は、すべての労働者に対して「最低限の賃金」を保障する法律です。目的は、労働条件の改善や生活の安定、公正な競争環境の確保などです。使用者(企業)は、定められた最低賃金額以上の給与を支払う義務があります。
重要なのはこの最低賃金制度が外国人労働者にも同じように適用されることで、国籍にかかわらず全ての労働者に対し最低賃金以上を支払わなければなりません。仮に最低賃金額よりも低い金額で、労働者と使用者のどちらも合意の上で雇用契約を結んでいたとしても、それは法律によって最低賃金と同額の定めをしたものとされます。
なお、最低賃金は都道府県ごとに異なっていますが、物価水準の違いをもとに設定されているためです。地域別最低賃金は毎年10月1日近辺に改定されるため、企業は最新の金額を常に把握しておく必要があるでしょう。
最低賃金を下回る場合、企業は次のようなリスクを負います。
不足分の賃金をさかのぼって支払う義務
【地域別最低賃金】違反の場合 → 最大50万円以下の罰金
【特定(産業別)最低賃金】違反の場合 → 最大30万円以下の罰金
これらの違反は、法的リスクだけでなく企業の信用失墜にもつながります。
こうした違反は、法的リスクだけでなく企業の信用にも大きなダメージを与えます。安心して働ける職場づくりのためにも、賃金管理は徹底しましょう。
その他の関連法令

労働基準法や入管法以外にも、外国人労働者の雇用についての重要法令が多くあります。これらは外国人労働者の安全や労働環境を守るためのもので、企業は適切な理解と遵守が必要です。
まず、ここで紹介する主な法令とその概要をまとめます。
法令名 | 概要 |
---|---|
労働者災害補償保険法 | 労災保険に関する法律 業務や通勤によるケガや病気に対して補償を行う |
雇用保険法 | 雇用保険制度を定める法律 失業給付や就職支援を提供する |
厚生年金保険法 | 老後や遺族への保障を目的とする年金制度 一定の条件で加入が必要 |
労働契約法 | 労働契約の基本ルールや安全配慮義務について規定する法律 |
労働安全衛生法 | 職場の安全・衛生管理を定める法律 安全教育や快適な職場環境づくりを促す |
労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険法とは、労災保険制度について定めた法律です。この法律により、労働者が業務上の事由または通勤により負傷した場合の補償制度が整備されています。
労災保険は通常の外国人労働者はもちろん、不法就労であっても適用されます。企業は雇用形態を問わず、労働者を1人でも雇っている場合は労災保険への加入が必要です。労災保険に未加入の企業で労災が発生した場合でも、労働者には補償が行われます。しかし企業は後日、保険料の徴収や追徴金の負担が発生する可能性があります。
外国人労働者が労災により負傷した場合は、労災指定病院で適切な治療を受けることが重要となるため、企業は適切な病院選択のサポートを行う必要があるでしょう。
雇用保険法
雇用保険法は雇用保険について定められた法律で、失業給付、助成金、教育訓練給付、雇用継続給付など、労働者の雇用安定や就職促進を目的とした制度を規定しています。
外国人労働者についても、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合は、雇用保険への加入が必要となります。雇用保険の加入手続きと併せて、労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況の届出も行われるため、適切な手続き管理が重要です。
厚生年金保険法
厚生年金保険法は、労働者やその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的に定められた法律です。厚生年金は70歳未満の会社員および公務員が加入する公的年金制度で、保険料は雇用主と労働者が折半で負担します。
外国人労働者の加入条件は、週の所定労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額8万8,000円以上、2ヶ月を超える雇用見込みがある、学生ではないといった要件を満たす場合となります。これらの条件に該当する外国人労働者については、国籍に関係なく厚生年金への加入手続きが必要です。
労働契約法
労働契約法は、労働者の保護と労働者・雇用主間の紛争防止を目的として、労働契約の基本的な理念やルールを規定した法律です。同法第5条では、使用者の安全配慮義務について「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。
この安全配慮義務は外国人労働者に対しても同様に適用されるため、企業は言語や文化の違いを考慮した安全管理体制の構築が求められます。
労働安全衛生法
労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康の確保や快適な職場環境づくりの促進のために制定された法律です。厚生労働省の外国人労働者の雇用指針では、日本人と同様に外国人にも労働安全衛生法が適用されると示されています。
企業は労働者を雇用した際や作業内容の変更をした際には、安全衛生教育の実施が必要となります。外国人労働者に対しては、言語の壁を考慮した理解しやすい安全教育の提供や、作業手順書の多言語化など、より丁寧な配慮が求められます。
不法就労や違法雇用のリスクと罰則

外国人労働者を雇用するうえで、最も注意すべき法的リスクのひとつが「不法就労」や「違法雇用」です。
これらの違反は、外国人本人だけでなく、企業にも重い罰則や社会的信用の失墜をもたらします。
不法就労となるケース
不法就労とは、就労が認められていない外国人を働かせること、または認められていない在留資格で働かせることを指します。
具体例:
観光ビザで入国した外国人を雇用する
技能実習生を本来の実習内容とは異なる業務に従事させる
在留期限が切れた状態で就労を継続させる
資格外活動許可を得ずに副業・アルバイトを行わせる
認められた労働時間(週28時間など)を超えて就労させる
企業は常に、外国人労働者の在留資格と就労可能範囲のチェックを徹底しましょう。
企業が負う責任と罰則
不法就労が発覚した場合、働いた外国人本人だけでなく、雇用した企業も処罰の対象となります。企業が不法就労であることを知らなかった場合でも、過失が認められれば不法就労助長罪が適用される可能性があるため、十分な注意が必要です。
過失とは「うっかりしていた」など注意が不足している場合を指し、在留カードをよく確認しなかった、不安な点があったが専門家に相談しなかったといった理由で結果的に不法就労させてしまった場合は、過失があったとみなされます。
罰則の具体例
対象 | 主な罪名・内容 | 刑罰 |
---|---|---|
外国人本人 | 不法入国の罪 | 3年以下の懲役もしくは禁錮、または300万円以下の罰金 |
外国人本人 | 無許可資格外活動の罪 | 1年以下の懲役もしくは禁錮、または200万円以下の罰金 |
外国人本人 | 在留資格の取り消しや退去強制処分 | 将来的に日本での在留資格取得が困難になる可能性がある |
雇用した企業 | 不法就労助長罪 | 2025年6月以降、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科可) |
企業が罰則を受ける場合、社会的信用を大きく損なう恐れがあります。そのため、採用前の在留資格確認や、雇用管理体制の構築が重要といえるでしょう。
不法就労助長罪について
不法就労助長罪とは、外国人に不法就労活動をさせる行為やそのあっせんを行った者に対して科される罪です。この罪は、外国人を直接雇用した企業だけでなく、不法就労者に宿舎を提供したり、パスポートを預かったりした人や、ブローカー、あっせん業者なども処罰対象となります。
詳細についてはこちらの記事で解説しています。
外国人を安心して雇用するための6つのポイント
外国人労働者を適法かつ安心して雇用するためには、採用前の確認作業と適切な労働条件の整備が欠かせません。不法就労や法令違反を防ぐためにも、以下のポイントを守りましょう。
在留資格と在留期間の確認
在留カードの確認
資格外活動許可の確認
労働条件の明確化
労働条件通知書の作成
賃金に関する注意点
外国人採用の手続きに必要な情報については、こちらの記事もご参照ください。
ポイントについて、以下で詳しく解説します。
在留資格と在留期間の確認
外国人を雇用するうえで最も肝心なのは、在留資格と在留期間をきちんと確認することです。採用面接では必ず在留カードを提示してもらい、その人が従事予定の業務に適した在留資格かどうかをチェックしましょう。
併せて雇用期間中に期限が切れる予定がないか、更新のタイミングも把握しておくと安心です。
在留カードの確認
在留カードは、偽造防止のためにさまざまなセキュリティ要素が施されています。表面のホログラムや特殊印刷、裏面の記載内容などを確認し、不自然な点がないか目を配りましょう。
有効期限や在留資格の種類、就労制限の有無もチェックポイントです。もし怪しい点が見つかった場合は、出入国在留管理庁への問い合わせや専門家への相談が有効です。
本物の在留カードかどうかの具体的な確認方法や、受け入れ企業がカードの取り扱いで気をつけるべきポイントについては以下の記事で解説しております。
資格外活動許可の確認
留学生や家族滞在など、本来は就労が認められていない在留資格の人を採用する際には、資格外活動許可の有無を必ず確認しましょう。この許可は在留カードの裏面に記載されています。
許可には「包括許可」と「個別許可」があり、それぞれ働ける業種や時間に制限があります。特に留学生は週28時間以内という上限があるため、シフト管理を徹底し、超過しないよう注意が必要です。
労働条件の明確化
外国人労働者との間で生じやすいトラブルを防ぐため、労働条件は書面で明確に示すことが重要です。賃金、労働時間、休日、職務内容といった基本的な条件はもちろん、残業の取り扱いや各種手当についても詳細に説明しましょう。
文化や慣習の違いで誤解が生じやすい部分もあるため、日本の職場ルールについても丁寧に説明しておくと、安心して働いてもらえます。
労働条件通知書の作成
労働基準法第15条により、企業は労働者に対して労働条件を明示しなければなりません。外国人の場合も同じで、賃金、労働時間、休日、勤務地、業務内容などを記載した労働条件通知書を渡しましょう。
外国人労働者の理解を深めるため、英語や母国語で説明資料を用意したり、専門用語をわかりやすく言い換えたりする工夫も有効です。
賃金に関する注意点
外国人労働者の賃金については、最低賃金法の遵守が絶対条件です。都道府県ごとに定められた最低賃金を下回ることは違法であり、国籍による差別的な取り扱いも認められていません。
給与の支払い方法については、労働基準法第24条に基づき通貨での直接支払いが原則ですので、銀行振込にする場合は本人の同意を得てください。振込手数料の負担についても、事前に取り決めておくとトラブルを避けられます。時間外労働に対する割増賃金の計算方法も、事前に説明しておくと安心です。
まとめ
外国人労働者の雇用を検討する際、多くの企業が最初に感じるのが「法律面の不安」です。入管法や労働基準法、最低賃金法など、守るべきルールは日本人雇用と変わらず適用され、さらに在留資格の確認や資格外活動の有無といった独自のポイントも押さえる必要があります。
一方で正しい知識で適切なステップを踏めば、優秀な外国人材を確保し長期的な戦力として育てることができます。外国人雇用に関する法的な不安や手続きでお困りの際は、Connect Jobまでお気軽にご相談ください。
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