特定技能「ビルクリーニング」とは?受け入れ要件や業務内容、雇用時の注意点を解説
- Hayato Kuroda
- 6月9日
- 読了時間: 16分
更新日:10月27日

ビルクリーニング業界では、慢性的な人手不足が続いており、多くの企業が人材採用に苦労しています。その解決策として注目されているのが、特定技能制度を活用した外国人材の採用です。特定技能「ビルクリーニング」分野では、清掃業務に従事できる外国人材を受け入れることが可能となり、多くの企業が人材採用の新たな選択肢として検討しています。
本記事では、特定技能「ビルクリーニング」の制度概要から受け入れ要件、業務内容、そして雇用時の注意点まで、企業担当者が知っておくべき情報を詳しく解説します。外国人清掃スタッフの採用を検討している企業にとって、実務に役立つ情報となるでしょう。
なお、外国人採用の流れや必要な手続きはこちらの記事でご確認いただけます。
目次
ビルクリーニング分野における人手不足の現状と課題

ビルクリーニング業界は、オフィスビル、商業施設、ホテル、病院など、多数の人が利用する特定建築物の清掃・衛生管理を担う重要な産業です。
公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が2024年に発表した調査によると、業界が抱える最大の課題として「人材不足」が挙げられました。中でも「現場従業員が集まりにくい」が90.4%と最多で、2位は「現場従業員の若返りが図りにくい」で74.7%、3位は「賃金上昇が経営を圧迫している」で67.5%と、人材採用や賃金に関連する悩みごとが上位を占めています。
こうした人手不足が長期化すると、清掃品質の維持が難しくなり、建築物の衛生状態の悪化を通じて利用者の健康リスクも高まるでしょう。
人材不足の解消を目指し「特定技能制度」が導入される
日本政府は2019年から特定技能制度を導入し、ビルクリーニングを含む分野で一定の技能を有する外国人材の受入れを可能にしました。この制度は、日本人の雇用機会を確保しつつ、人手不足分野に限定して受入れを図る仕組みであり、ビルクリーニング業界でも有効な選択肢として活用が進んでいます。
ビルクリーニング業界においても、特定技能制度を活用した外国人材の採用が人材不足解消の有効な手段として期待されています。
特定技能「ビルクリーニング」制度の概要

特定技能「ビルクリーニング」とは、ビルクリーニング分野における一定の技能を有し、日本で就労することを認められた外国人が取得できる在留資格です。
この在留資格を持つ外国人は、事務所、商業施設、学校、興行場、宿泊施設など、多数の人が利用する建築物の清掃業務に従事することができます。日常清掃、定期清掃などの他、一定の範囲であればホテル客室のベッドメイク作業も対象範囲です。
特定技能1号と2号の違い
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。外国人材が保持する技能レベルに応じて、特定技能1号と特定技能2号に分けられています。
元々2号は建設業と造船・舶用工業の2分野のみでしたが、現在は拡大し、介護以外の11分野で2号を受け入れ可能とすることが決定されています。2023年秋から試験がスタートしました。
特定技能2号は家族帯同が可能で、在留期限の更新回数にも上限はないため、長く働きたいと考えている外国人にとって待望の2号拡大となりました。また、在留期限を更新し続けられれば、永住権を取得できる可能性もあります。
特定技能「ビルクリーニング」で従事できる職種と業務内容

ビルクリーニングの特定技能を持つ外国人材が従事できる業務内容を説明します。
従事できる業務と職種
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材が従事できる業務は、多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部清掃です。具体的には、特定技能評価試験の試験範囲となっている以下の清掃作業が含まれます。
作業の種類 | 内容・清掃範囲 |
床面清掃 |
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壁面・立体面清掃 |
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什器・備品清掃 |
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天井面清掃 |
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特定技能1号の外国人材は場所や建材、汚れなどの違いに対し、適切な清掃方法、洗剤、用具を選択して清掃作業を行います。目的は建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保、保全の向上などです。
ビルクリーニング分野の特定技能2号については導入が決定されていますが、2025年10月時点では評価試験は未実施であり、順次整備が進められる予定です。
ベッドメイク業務に従事できる条件
以下の業務を含む総合的な客室清掃業務であれば、特定技能「ビルクリーニング」の外国人材がベッドメイク業務に従事できます。
客室内の床清掃
浴室・洗面所・トイレの清掃
アメニティの補充・整理
ベッドメイキング
客室内の什器・備品の清掃
ただし、ベッドメイク作業のみを行う場合や、清掃を伴わないリネン交換のみの業務は、特定技能「ビルクリーニング」の対象外です。総合的な客室清掃業務であることが条件なので、注意しなければいけません。
特定技能「ビルクリーニング」1号の取得方法

外国人材が特定技能「ビルクリーニング」1号の在留資格を取得するには、主に以下の2つの方法があります。
ビルクリーニング特定技能1号評価試験に合格
技能実習2号「ビルクリーニング」分野から移行
それぞれ見ていきましょう。
ビルクリーニング特定技能1号評価試験に合格
ビルクリーニング特定技能1号評価試験に合格することで、特定技能1号の在留資格取得に必要な技能水準を満たすことが可能です。なお、特定技能1号の外国人材には一定の日本語能力が求められ、以下のいずれかの要件を満たさなければいけません。
日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格すること
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格すること
日本語能力試験N4レベルは、基本的な日本語を理解し、日常的な場面で使用できる程度のレベルです。清掃現場では、上司や同僚との基本的なコミュニケーションや、清掃手順や安全指示の理解が必要となるため、これらの日本語能力が求められます。
ビルクリーニング特定技能1号評価試験とは
ビルクリーニング特定技能1号評価試験は、特定技能1号の在留資格を取得するために必要な技能水準を測定する試験です。この試験は、ビルクリーニング職種・ビルクリーニング作業の第2号技能実習修了相当の水準で実施されます。
実施機関 | 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会 |
実施方法 |
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試験構成 | 学科試験・実技試験の2部構成 |
出題範囲 |
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試験会場 |
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開催頻度 | 年数回 |
合格証明書の有効期限 | 10年間 |
技能実習2号「ビルクリーニング」分野から移行
技能実習制度で来日し、既に「ビルクリーニング」分野の技能実習2号を修了した外国人は、特定技能1号への移行が可能です。この場合、同一職種・作業での実習修了者は、原則として技能試験・日本語試験が免除されます。
移行手続きの流れ | 概要 |
1.受け入れ企業の決定 | 技能実習を行った企業で継続して働くか、新たな企業に就職するかを決定 |
2.在留資格変更許可申請の準備 |
|
3.地方出入国在留管理局への申請 | 技能実習の在留期間が満了する前に「在留資格変更許可申請」を提出 |
4.審査・許可 | 審査期間は通常1~3ヶ月程度が目安 |
5.就労開始 | 許可が下りれば、特定技能1号として最長5年間就労可能 |
技能実習で培った実務経験・日本での就労経験・生活適応力が評価され、特定技能1号への移行手続きは比較的円滑に進められます。
なお、転職する場合は、受け入れ先の企業が「ビルクリーニング分野特定技能協議会」に加入していることや、「建築物清掃業」「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けていることが条件となります。
特定技能「ビルクリーニング」2号の取得方法

特定技能2号は家族帯同が可能で在留期限の更新回数に上限がないため、長期的に日本で働きたい外国人材にとって重要な在留資格です。
特定技能2号の取得方法は以下の通り制度として定められています。
ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験に合格する
実施機関:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
内容:現場責任者として必要な知識と技能を評価する試験
ビルクリーニング技能検定1級試験に合格する
国家検定として厚生労働大臣が認定する高度な技能を証明する資格
日本国内でのみ実施
いずれの方法でも、「現場を管理する者としての実務経験を2年以上有すること」が要件とされています。
この実務経験は、ビルクリーニング分野特定技能協議会が定める規程に基づき、所属企業等による証明が必要です。
ビルクリーニング特定技能2号評価試験とは
ビルクリーニング特定技能2号評価試験は、特定技能2号の在留資格を取得するために必要な高度な技能水準を測定する試験です。この試験の水準は技能検定1級と同等とされており、現場責任者としての能力が求められます。
実施機関 | 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会 |
実施方法 |
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学科試験 |
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実技試験 |
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出題範囲 |
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受験資格 | 建築物内部の清掃に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての実務経験を2年以上有すること |
合格証明書の有効期限 | 10年間 |
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を雇用する際の3つの要件

企業が特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を受け入れるためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」への登録
ビルクリーニング分野特定技能協議会へ加入
外国人材への支援体制の確立
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」への登録
受入企業(特定技能所属機関)は、建築物衛生法第12条の2に基づき、以下のいずれかの登録を受けている必要があります。
第1号:建築物清掃業の登録
第8号:建築物環境衛生総合管理業の登録
特定技能外国人を受け入れる営業所が登録を受けていることが条件です。
建築物環境衛生総合管理業の場合は、そのうち「建築物清掃業」に該当する業務範囲に限り、特定技能外国人を就労させることが可能です。
ビルクリーニング分野特定技能協議会へ加入
ビルクリーニング分野特定技能協議会は、厚生労働省の指導のもとに設置された業界横断的な組織で、業界団体、試験実施機関、制度関連機関などで構成されています。受入企業は、協議会が実施する調査・報告・指導への協力義務を負います。
協議会への加入は、受入れにあたっての必須要件とされています。
外国人材への支援体制の確立
特定技能所属機関(受入機関)は、特定技能外国人に対して以下のような支援を提供する義務があります。
事前ガイダンス(入国前・入国直後)
住居の確保支援(住居の契約時の連帯保証人となるなど)
生活オリエンテーション
公的手続きの同行支援
日本語学習支援
相談・苦情対応
日本人との交流促進
外国人が死亡または重傷を負った場合の対応
これらの支援業務は「登録支援機関」に委託でき、その場合は支援計画の作成や定期的な面談などを登録支援機関が代行します。
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を受け入れるためには、上記の要件を全て満たした上で、出入国在留管理庁に在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行います。
特定技能「ビルクリーニング」の外国人を雇用する時の3つの注意点

特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を雇用する際には法令で定められた要件に加えて、実務上のさまざまな点に注意を払わなければなりません。その中の3つの注意点について解説します。
適正な労働条件の確保
職場適応と定着支援
行政手続きの遵守
それぞれ詳しく見ていきましょう。
適正な労働条件の確保
特定技能外国人には日本人と同等以上の給与水準を確保することが求められます。最低賃金の遵守はもちろん、能力や経験に応じた適正な給与設定、労働時間や休日の適切な管理、社会保険・労働保険への加入も必要です。雇用契約は外国人材が理解できる言語で明確に説明し、業務内容や条件を詳しく記載しましょう。
職場適応と定着支援
日本人メンターの配置や段階的な業務指導プログラムの作成により、外国人材の職場適応を支援します。定期的な面談や相談窓口の設置、日本人社員との交流促進も定着率向上に効果的です。技能向上に応じた処遇改善や資格取得支援など、将来的なキャリアパスを示すことも大切です。
行政手続きの遵守
出入国在留管理庁への四半期ごとの受入状況や支援状況などの届出や、雇用契約変更時の届出などの行政手続きを適切に行います。支援計画の実施状況は記録・保管し、労働関係法令も確実に遵守しましょう。法令違反は企業の信用問題にもつながるため、コンプライアンス意識を徹底することが重要です。
特定技能「ビルクリーニング」に関してよくある質問
特定技能「ビルクリーニング」に関してよくある質問と、それぞれの回答をまとめました。
ビルクリーニングの特定技能2号の合格率は?
2025年度に行われた第4回・5回の合格率は以下の通りです。
試験回 | 実施日 | 合格者数 | 合格者数 | 合格率 |
第4回 | 2025年3月27日 | 35名 | 5名 | 14.3% |
第5回 | 2025年6月24日 | 24名 | 4名 | 16.7% |
実施回によって合格率は変動しますが、複数の資機材を管理し、現場の指導・監督を担うリーダーレベルの技能が求められるため、十分な実務経験と試験対策が必要です。
技人国で清掃業はできますか?
「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の在留資格で、ビルクリーニングや客室清掃といった清掃業務を主たる業務として行うことはできません。技人国は、大学等で学んだ専門知識を活かす業務に従事することが前提です。清掃業務は、専門的な知識が不要な「単純労働」とみなされるため、在留資格の活動範囲外となります。
技能実習生は客室清掃に従事できますか?
はい、可能です。
「ビルクリーニング」の技能実習生は、ホテルや旅館の客室清掃(ベッドメイキング含む)に従事できます。ただし、これは「技能実習としての清掃技術の習得」を目的としており、一般的なアルバイト的業務とは異なることに注意が必要です。
ビルクリーニング業における特定技能外国人の人数はどれくらいいますか?
出入国在留管理局の資料によると、2025年5月末時点で特定技能「ビルクリーニング」の外国人材の数は以下の通りです。
特定技能「ビルクリーニング」 | 人数 |
1号 | 7,187人 |
2号 | 5人 |
今後5年間で最大37,000人の受け入れが想定されているため、この先も増加傾向が続くでしょう。
出典:出入国在留管理庁「制度説明資料」(2025年10月時点)
まとめ
特定技能「ビルクリーニング」制度は、深刻な人手不足に直面するビルクリーニング業界において外国人材の活用を促進する重要な仕組みですが、その採用・定着には適切な支援体制の構築や文化的な配慮が不可欠です。
法的要件を満たしつつ、外国人材が働きやすい環境を整えることで、人材不足の解消と共に、多様な価値観を取り入れた職場づくりが実現できるでしょう。
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