溶接業務に従事できる特定技能の種類や要件、試験内容、採用時の注意点を解説
- Hayato Kuroda
- 7月25日
- 読了時間: 16分
更新日:8月16日

近年日本の製造業界では深刻な人手不足により、外国人労働者の採用ニーズが高まっています。特に溶接業務においては、特定技能制度を通じて外国人材を雇用できるようになりました。
この制度では工業製品製造業や造船・舶用工業、鉄道業界など複数の分野で溶接技術を持つ外国人の受け入れが認められており、それぞれの分野で異なる要件や試験内容が定められています。一方で、適切な雇用を実現するためには、関連法令の遵守や必要な手続きを正確に理解することが不可欠です。
そこで本記事では、溶接業務に従事できる特定技能の種類から採用時の注意点まで、企業が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。
なお、外国人採用の流れや具体的な方法については、こちら記事も参考にしてください。
目次
特定技能制度の概要
特定技能制度は、深刻化する人手不足に対応するため、一定の専門性と技能を有する外国人労働者が日本国内で就労できるよう2019年4月に創設された在留資格制度です。この制度により、従来の「技能実習制度」とは異なり、外国人が即戦力の労働力として日本企業で働くことが可能となりました。
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの区分があります。
特定技能1号:相当程度の知識または経験を要する業務に従事する外国人が対象。在留期間は通算5年までで、原則として家族の帯同は不可。
特定技能2号:熟練した技能を要する業務に従事する外国人が対象で、在留期間の更新に制限がなく、一定の条件を満たせば永住許可申請も可能。、配偶者や子どもを帯同することも認められている。
特定技能2号の取得者は、在留期間の更新に上限がなく、追加要件を満たせば永住許可申請も可能です。さらに、配偶者や子どもなどの家族を日本に呼び寄せることもできるため、長期的なキャリア形成を見据えた外国人材の採用が実現できます。
なお、2025年7月時点で特定技能2号が認められている分野は、「建設」「造船・舶用工業」「自動車整備」「工業製品製造業」の4分野です。
特定技能1号と2号の詳細は以下の記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。
溶接業務ができる特定技能の種類と区分

溶接技術を必要とする業務は、特定技能制度において複数の分野で受け入れが認められており、分野ごとに異なる区分や要件が設定されています。
特定技能1号・2号それぞれで溶接が可能な分野は以下の通りです。
在留資格 | 分野・区分 | 主な業務内容例 |
特定技能1号 | 工業製品製造業(機械金属加工区分) | 金属部品や構造物の溶接、検査 |
造船・舶用工業(造船区分) | 船体外板や構造材の溶接、大型構造物の接合 | |
造船・舶用工業(舶用機械区分) | 船舶エンジン部品や機械部分の精密溶接 | |
鉄道(車両製造区分) | 車両フレームや台車の溶接、構体組立て | |
特定技能2号 | 工業製品製造業(機械金属加工区分) | 溶接業務に加えて工程管理・指導 |
造船・舶用工業(造船区分・舶用機械区分) | 現場管理、品質統括、技術指導を含む溶接 |
ここからは、特定技能1号と2号それぞれにおける各区分の主な業務内容について詳しく解説します。
特定技能1号
工業製品製造業(機械金属加工区分)
機械金属加工区分は、素形材製品や産業機械などの製造工程に従事する外国人材が対象です。指導者の指示を理解し、または自ら判断して業務を行うことが求められます。
この区分では溶接が主要業務の1つとされ、金属部品の接合や構造物の組み立てにおける溶接作業が中心です。
主な溶接業務
各種金属材料の溶接加工
溶接構造物の製作
溶接部の検査
関連業務
原材料や部品の調達・搬送
製造工程の前後作業への補助
造船・舶用工業(造船区分)
造船区分では、監督者の指示を理解し、または自らの判断により船舶の製造工程作業に従事する外国人材が対象です。2024年3月29日の閣議決定により業務区分の再編が行われ、従来の6区分から3区分に統合されました。
再編前後の業務区分
見直し前 | 見直し後(造船区分) |
溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て | 溶接、塗装、鉄工、とび、配管、船舶加工 |
溶接業務においては以下のような特徴があります。
船体の外板溶接
構造材の接合
船舶用鋼材の溶接加工
大型構造物の施工
造船・舶用工業(舶用機械区分)
舶用機械区分は舶用機械の製造工程作業に従事する外国人材を対象としています。業務区分再編により、以下の11業務を担当できるようになりました。
溶接
塗装
鉄工
仕上げ
機械加工
配管
鋳造
金属プレス加工
強化プラスチック成形
機械保全
舶用機械加工
溶接業務では、船舶のエンジン部品や機械部分の精密な溶接作業、舶用機械の構成部品における溶接加工などが主要な内容となります。造船区分と比べてより精密で複雑な技術が求められる分野です。
鉄道(車両製造区分)
鉄道車両製造区分では、鉄道車両や鉄道車両部品などの製造業務に従事する外国人材を対象としています。この区分における溶接業務には以下が含まれます。
鉄道車両のフレーム溶接
台車枠製造における溶接作業
構体組立時の溶接
安全性が重要視される鉄道業界の特性上、高い品質基準と精度の溶接技術が必要です。また、構体組立てや台車製造においても溶接は欠かせない技術となっています。
特定技能2号
工業製品製造業(機械金属加工区分)
特定技能2号の機械金属加工区分では、製造現場のリーダー役として技能者を指導しながら、製造工程や溶接業務に従事します。1号の溶接業務に加えて、作業チームのリーダーシップや品質管理、技術指導などの役割が必要です。
主な役割
製造工程全体の管理
作業チームのリーダーシップ
溶接品質の管理
後輩外国人材への技術指導
溶接工程の効率化や改善提案
長期的なキャリア形成が可能で、家族の帯同も認められる在留資格です。
造船・舶用工業(造船区分・舶用機械区分)
特定技能2号の造船・舶用工業分野では、複数の作業員を指揮・管理しながら船舶や舶用機械の製造に従事します。溶接業務においても現場管理や品質統括、技術的な判断を行う立場として機能することが期待されています。
主な役割
製造現場全体の指揮・命令・管理
溶接品質の総合管理
技術的な判断と改善指示
チーム全体の安全・効率の確保
業務区分再編の経過措置により、旧区分で溶接の在留許可を得ている外国人材は以下のようにより幅広い業務に従事できる環境となっています。
旧区分での在留許可 | 新区分での対応範囲 |
溶接業務の在留許可 | 造船区分の6業務全て、および舶用機械区分の11業務に従事可能 |
特定技能「工業製品製造業」で溶接の外国人雇用するための要件

次に特定技能「工業製品製造業」で溶接ができる外国人を雇用するための要件を説明します。
人材に求められる要件
特定技能で溶接業務に従事するには、特定技能1号と特定技能2号でそれぞれ異なる要件が定められています。
特定技能1号の要件
特定技能1号で溶接業務に従事するには、以下の条件が求められます。
製造分野特定技能1号評価試験(機械金属加工)の合格 ※技能実習2号(機械金属加工分野)を良好に修了している場合は免除
日本語能力試験N4または国際交流基金日本語基礎テストの合格 ※こちらも技能実習2号修了者は免除
製造分野特定技能1号評価試験(機械金属加工)の試験詳細
項目 | 内容 |
試験名 | 製造分野特定技能1号評価試験(機械金属加工) |
目的 | 溶接業務に必要な基本的技能・知識を評価する |
構成 | 実技試験・学科試験 |
実技試験の内容 | アーク溶接やガス溶接の実践適切な溶接姿勢溶接条件の設定溶接欠陥の防止 |
学科試験の内容 | 溶接に関する基礎知識安全衛生品質管理図面の読み方 |
実施場所 | 日本国内および海外の指定会場 |
合格基準 | 実技試験・学科試験の両方で一定以上の点数を取得 |
備考 | 試験の詳細やスケジュールは製造業技能評価試験機構のWebサイトで確認可能 |
特定技能2号の要件
特定技能2号では、溶接業務に加え、製造現場の管理や後輩の育成、工程改善などリーダー的役割が求められます。また、技能検定1級(例:鉄工、工場板金、機械加工など)での代替が認められており、業務内容に応じた高度な技術が前提となります。
製造分野特定技能2号評価試験の合格
ビジネス・キャリア検定3級の合格もしくは技能検定1級(溶接関連:鉄工、工場板金、機械加工等)の合格
日本国内の製造現場での実務経験
評価試験は2024年度から一部業務区分で開始され、段階的に整備が進められています。
製造分野特定技能2号の試験詳細
項目 | 内容 |
試験名 | 製造分野特定技能2号評価試験 + ビジネス・キャリア検定3級 |
目的 | 製造現場のリーダーとしての技能・管理能力を評価 |
構成 | 実技試験・学科試験(または技能検定1級で代替) |
評価内容 | 溶接品質管理、後輩指導、工程管理、効率化提案 |
実務経験 | 日本国内の製造現場での経験が必要 |
合格基準 | 両試験で基準点以上を取得 |
備考 | 技術だけでなくマネジメント力も重視 |
特定技能2号では、溶接技術だけでなくチームの管理や指導、改善提案といった高度なスキルが求められ、長期的なキャリア形成や家族帯同も可能です。
受け入れ企業に求められる要件
工業製品製造業分野で溶接業務の外国人材を受け入れる企業は、以下の要件を満たす必要があります。
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への加入
協議会決定事項の実施
協議会活動への協力
訓練・研修の実施(推奨事項で義務はない)
実務経験証明書の交付
特定技能「造船・舶用工業」で溶接の外国人を雇用するための要件

特定技能「造船・舶用工業」分野で溶接作業できる外国人材を雇用するには以下の条件を満たす必要があります。
人材に求められる基準
特定技能1号の要件
特定技能1号で造船・舶用工業分野の溶接業務に従事するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
造船・舶用工業分野特定技能1号試験(造船区分または舶用機械区分)の合格
関連する技能検定3級の取得
ただし、造船・舶用工業分野の技能実習2号を良好に修了している場合は、試験が免除され、技能実習から特定技能へのスムーズな移行が可能です。
日本語能力については、以下のいずれかの合格が求められます。
国際交流基金日本語基礎テスト
日本語能力試験N4以上
こちらも技能実習2号を修了している場合は免除されます。
造船・舶用工業分野特定技能1号試験の詳細
試験は実技試験と学科試験で構成され、造船や舶用機械の製造現場に必要な溶接技術や知識が問われます。以下の表にポイントをまとめました。
項目 | 内容 |
試験名 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験 |
構成 | 実技試験・学科試験 |
実技試験の内容 | 船体構造物の溶接- 機械部品の溶接- 大型構造物の施工に必要な技能 |
学科試験の内容 | 造船・舶用工業の基礎知識- 安全衛生管理- 品質管理- 図面の読み方 |
特徴 | 大型構造物や海洋環境に対応した品質基準の理解が重視される |
安全管理 | 造船現場特有のリスク管理や安全作業に関する知識も評価対象 |
合格基準 | 実技・学科の両方で所定の点数以上を取得すること |
この試験では実践的な溶接技能に加え、現場で求められる安全管理や品質基準についての理解も重視されます。現場特有の条件に対応できる技能と知識が総合評価される仕組みです。
特定技能2号では、造船・舶用工業分野特定技能2号試験への合格または技能検定1級の取得に加えて、複数の作業員を指揮・命令・管理する監督者としての実務経験が必要となります。
特定技能2号(造船・舶用工業分野)の要件
特定技能2号では、より高度な技能や監督者としての実務経験が求められます。 対象となるのは、複数の作業員を指揮・命令・管理しながら、造船・舶用機械の製造現場を担うリーダー的存在です。求められる要件は以下の通りです。
造船・舶用工業分野特定技能2号試験の合格、または技能検定1級(造船・溶接関連職種)の取得
日本国内の製造現場での実務経験
マネジメント力・安全管理能力
特定技能1号の水準を超える高い技術力に加え、チームをまとめる力や品質を管理する力が求められます。
造船・舶用工業分野特定技能2号試験の詳細
試験は1号よりもさらに上位レベルの内容となり、技術面・管理面の両方が評価されます。以下の表にまとめました。
項目 | 内容 |
試験名 | 造船・舶用工業分野特定技能2号試験 |
目的 | 高度な溶接技能と現場管理能力を評価 |
構成 | 実技試験・学科試験(または技能検定1級で代替可能) |
実技試験の内容 |
|
学科試験の内容 |
|
評価ポイント | 技術力だけでなく、リーダーシップや指導力も評価される |
実務経験 | 日本国内の製造現場での実務経験が必須 |
合格基準 | 実技・学科で基準点以上を取得すること |
特定技能2号は単に技能者として作業するだけでなく、チームの先頭で品質や安全、効率までを総合的に管理できる人材向けの資格です。
受け入れ企業に求められる要件
造船・舶用工業分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、以下の要件を満たすことが義務づけられています。
造船・舶用工業分野特定技能協議会への加入
協議会活動への協力国土交通省による調査・指導への協力
登録支援機関への委託条件
訓練・研修の実施
実務経験証明書の交付
特定技能「鉄道」で溶接の外国人を雇用するための要件

続いて特定技能「鉄道」で溶接ができる外国人材を受け入れるための条件を見ていきましょう。
人材に求められる基準
特定技能1号で鉄道分野の溶接業務に従事する場合、受け入れは主に「車両製造区分」で行われます。必要な条件は以下の通りです。
鉄道分野特定技能1号評価試験(車両製造)の合格
関連する技能検定3級の取得(対象職種:機械加工、仕上げ、電子機器組立て、電気機器組立て、塗装)
これらの条件は溶接業務に直接関わる技能を持つ人材を選ぶために設定されています。なお鉄道分野の技能実習2号を良好に修了している場合は試験が免除され、スムーズに特定技能へ移行可能です。
日本語能力についても以下のいずれかが求められますが、こちらも技能実習2号修了者であれば免除されます。
国際交流基金日本語基礎テスト
日本語能力試験N4以上
鉄道分野特定技能1号評価試験(車両製造)の詳細
試験は鉄道車両製造に特化しており、実技と学科の両方で高い水準が求められます。 特に安全性が最重要視される鉄道業界の特性に応じ、厳格な評価が行われます。
項目 | 内容 |
試験名 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(車両製造) |
構成 | 実技試験・学科試験 |
実技試験の内容 |
|
学科試験の内容 |
|
特徴 | 鉄道車両特有の安全基準・品質要求を理解し、実践できるかを重視 |
合格基準 | 実技・学科の両方で所定の点数以上を取得 |
鉄道車両製造では、一般的な溶接技術だけでなく、鉄道ならではの厳格な安全基準や品質管理に対応できる知識・技能が必要です。試験もその点を重視して構成されており、高度で精密な技術が評価されます。
受け入れ企業に求められる要件
鉄道分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、以下の要件を満たさなければいけません。
事業者要件
鉄道分野特定技能協議会への加入
協議会活動への協力
国土交通省による調査・指導への協力
登録支援機関への委託条件
特定技能外国人材採用の流れ

特定技能外国人材の採用は、求人募集から入国・雇用開始まで複数のステップを経て行われます。一般的な流れは以下の通りです。
企業が求人を出し、応募者を募集する
応募者の中から、技能試験や日本語能力試験に合格した人材を選定する
選定した人材について、在留資格認定証明書の交付申請を行う
許可が下りれば、外国人材の入国手続きを進める
入国後、支援計画に基づき生活支援や業務指導を実施し、本格的に雇用を開始する
採用プロセスでは登録支援機関の活用も可能で、専門的なサポートを受けながら手続きを進めることができます。ただし溶接業務の特性上、技能レベルの適切な評価や安全教育を徹底しなければいけません。
特定技能外国人材の採用手続きや必要な費用、具体的な進め方の詳細は以下の記事をご覧ください。
特定技能外国人材採用時の注意点

特定技能外国人を雇用する際は、法令遵守と適切な労働環境の整備が不可欠です。雇用契約では在留資格に沿った業務内容で契約を締結し、日本人と同等以上の待遇を保証することが求められます。労働時間については労働基準法を遵守し、適切な残業代や深夜手当の支払いもしなくてはなりません。
また、溶接業務においては許可された業務範囲を逸脱しないよう注意が必要です。危険作業を伴う溶接現場では、法令に則った安全教育と継続的な指導が欠かせません。特に技能実習制度からの移行者については、技能レベルの再確認と追加研修の実施も重要なポイントです。
外国人採用全般における手続きの流れや費用などの詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
特定技能制度を活用した溶接分野の外国人材採用は、深刻化する人手不足の解決策として大きな効果が期待できます。技能実習2号からの移行制度も整備されているため、既に一定の技能を身につけた外国人材を効率的に確保することが可能です。
ただし、工業製品製造業、造船・舶用工業、鉄道業界それぞれで異なる要件が設定されており、企業の事業内容に応じた最適な分野選択が求められます。他にも、関連法令の遵守や協議会への加入、継続的な研修実施などの要件を満たす必要があるため、慣れない場合は専門家のサポートを受けながら採用を進めるとよいでしょう。
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